チャムシップとは、大人との関係から移行する最初の仲間関係です。
これは、アメリカで活躍した心理学者で精神科医のサリバンが提唱しました。
このチャムシップを作ることができなければ、その後のギャンググループ、ピアグループなど次の段階に進むことが困難になり、思春期や青年期の怒涛の時代を乗り越えるための障害にもなります。
そんな基本的な仲間関係であるチャムの関係、チャムシップはどのようなものなのでしょうか。
チャムシップとは
チャムシップとは、アメリカのサリバンという心理学者で精神科医が提唱した言葉。
子供時代は、親と関係が深くつながっています。
ですが、ある時、いつの間にか、子供は親から離れ、親友ともいうべき仲間関係を作っているのではないでしょうか。
その親から離れる最初の関係、あなたと私、1対1の同性同士の友達関係をチャムシップと言います。
つまり、男の子と女の子は少し違いがあるにしても、同性同士の特定の友達関係はとても親密で他の人が入り込むスキのない関係がチャムシップ。
前思春期に見られる排他的で親密な二者関係の同性の特定の友人のことをチャム(chum)、チャムとの関係の在り方をチャムシップ(chumship)と呼ぶのです。
思春期には、それまでに経験したことのない身体の変化、心の変化が怒涛の如く押し寄せてきます。
その波を乗り越えるには、同じ体験、同じ気持ちになる人と手をつなぐことで勇気づけられ、克服することができる。
今までと違う世界で生きていくために、「仲間」を作ることが必要になるのです。
このチャムシップの形成は、思春期の子供たちが、学校などの集団生活の場で親や教師などから離脱して新たなる存在基盤を作り始めるのです。
心理学者で精神科医のサリバンのいう仲間関係
心理学者で精神科医のハリー・スタック・サリバンは、この前思春期から思春期にかけて形成される仲間関係をチャムシップとしてとらえました。
チャムシップとは自分自身の存在意義を確立するという意味にもなり、子供から大人への健全な精神発達の上で重要な役割を果たしているとしています。
チャムである相手から自分の存在を認められることで、自分の立場を確立することができるのです。
小学校3年から4年くらいになると学校での先生との関係が大きく変わってきます。
それまで、休み時間になると先生のところにわぁっと集まっていたのが、子供たち同士で集まることが多くなる時期。
先生がまとめていかなければばらばらのクラスだったのも、いつの間にか集団で活動したりします。
低学年の時は、絶対的な存在だった先生が、高学年に近づくにつれて普通の大人に見え始めたり、友達との約束を優先したり、大切にしたりするようになるもの。
家庭でも、親との距離を取り始めるようになり、子供通しの距離が近くなってチャムシップの関係を作るようになるのです。
思春期には、大人との関係よりも友達との関係が心理的にも社会的にも重要な意味があるのではないでしょうか。
大人の身体になる前に子供の心から大人の心になる前思春期という期間があります。
この時期は、独特のチャムシップという友達関係を作るようになる時期。
次のような状況が良く見られるのではないでしょうか。
- 女の子同士でどこに行くのも一緒
- トイレに行くのも二人で手をつないで一緒に行く
- 同じキャラクターの文具を2人で持つ
- お気に入りの消しゴムやシールを交換し合う
- 放課後いつも二人で遊ぶ
- 相手がほかの子と仲よく話していると嫉妬する
- 親密な友人が自分のことを放っておくと寂しく思う
- けんかをすると自分の一部が揺らぐようで耐えがたいほどの不安になる
- 不安にならないようにいつも仲良しで親友であるというメッセージをいつも交換し合う
- わざと大人が嫌がるような言葉で遊ぶ
- 共通の興味あるコレクションを見せ合い交換して遊ぶ
- 自分たちが好きなアニメや物語の裏話や秘密を共有し合う
前思春期や思春期には、自分の在り方が大きく変化していき、情緒的にも不安定になります。
今まで当たり前であったものが当たり前でなくなってしまい、自分自身を対象化してとらえる自我体験をします。そのときには、子供にとって、親や先生ではなく友人という横のつながりが重要になるのです。
チャムシップとは、青年期の仲間意識へのファーストステップ
子どもは、思春期、青年期へと入るわけですが、その前段階として同性の友人との親密な関係、チャムシップを経験します。
サリバンは、チャムとの関係、チャムシップを通じて、子供たちが本当の意味での他者に対する感受性、自分中心でなく、相手が本当に喜ぶことは一体何かということを考えだすといいます。
そうした他者への無償の気づかいが、愛を育てていくというのです。
そのうちに子供たちは異性に対する愛を育てる時期に入っていきますが、肉体的にも心理的にもという言存在である異性といきなり親密になれるわけではありません。
まずは、同性と親密になることで他の人への尊重や悲しみの気持ちを育てていくことができるのです。
同時に自分自身もかけがえのないものとして大切に扱ってもらうことで自己肯定感や自信を育てていくことにもつながる。
チャムとの関係、チャムシップにおいては、男の子はより男の子らしく、女の子はより女の子らしくなっていくことが多く見られます。
お互いがお互いを模索しあい、服装や立ち振る舞い、興味を持つものや考え方や感じ方などを学び取って、中性的な子供の感覚から抜け出すということ。
実際にこの時期には、男子と女子はそれぞれお互いのジェンダー的な特徴を極端に強調し始めます。
女子は女子で固まり、男子の野蛮さに苦言を呈し始めるし、男子はことさら女子を意識し始め、意地悪をしたり女子と一緒にいる男子をからかったりすることを見かけるでしょう。
このような経過を経て自分のジェンダーアイデンティティも作り上げることができるのです。
チャムとの排他的で親密な関係であるチャムシップは前思春期に入って心が大きく変化し戸惑い揺れ動いている自分という感覚を鏡写しのように他の人に投影し、補償し、回復しようということ。
自分の興味や感覚をチャムに託してチャムから承認してもらい、そして自分がそのチャムを承認することが自分自身を承認することにつながっていく。
こうしてお互い認め合うチャムシップの中で、自己の感覚を確立していくことになります。
サリバンは自分というものがとりわけ揺れやすく、希薄となりやすい統合失調症の治療において、チャムシップの重要性に着目して運営を任されていたシェパード・アンド・イノック・プラット病院で検証しています。
男性患者を男性の看護師が親密に世話をして親密な人間関係を作り上げることを何よりも重要項目として治療した結果、寛解率8割という驚くべき治癒効果をあげたのです。
(関連記事:自己同一性の意味を分かりやすくいうと?自我同一性との違いはなに?)
まとめ
以上、神戸ヒプノセラピー、催眠療法のベレッツアが「チャムシップとは。心理学者で精神科医のサリバンのいう仲間関係」についてお伝えしました。
チャムシップの存在は、子供から大人になるためのステップ、青年期に向かうための準備です。
心が揺れ動く時期だからこそチャムシップが重要な役割を果たすことになる。
そんなチャムシップは、相手を認めることで自分を認めてもらうことであり、それが、サリバンの治療効果にも表れたのでしょう。
(関連記事:青年期の発達課題とは)
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