こんにちは。
催眠を心理学で科学する「催眠心理学」
神戸ヒプノセラピー、催眠療法のベレッツアです。
さて、あなたは物事を覚えたり忘れたりと、無意識で本能的に記憶を扱いながらも、その記憶のメカニズムの本質を知っていますか。
記憶のメカニズムさえわかれば、その記憶を自由に扱えるようになります。
記憶さえ自由になれば、あなたが過去のトラウマに囚われることもなく、思い込みやすり込みで判断を誤ることもありません。
記憶があなたのこころをコントロールするのではなく、あなたが記憶をコントールするって、素晴らしいと思いませんか?
覚えることと忘れること。記憶を自由に扱えたら、小さなことでくよくよと悩んだり、大事なことを忘れて失敗したりすることが少なくなるはず。
それでは、そんな記憶について、心理学で解明された記憶のメカニズムのうちから、記憶の種類について見ていきます。
(関連記事:ヒプノセラピーで効果のある3種類の方法とは誰よりも幸せになる方法)
記憶のメカニズム
一般的に記憶は、一度形消したことを思い出すという一連の過程のことを指します。
この記憶があるおかげで、日常生活を問題なく過ごすことができる。
そして、記憶はあなた自身の性格や考え方などのアイデンティティも創り出しています。
また、記憶は、過去のことだけでなく、未来のことも創り出します。
例えば、お客さんとの取引において、自分がどのように説明しようか、どう話せば納得してもらえるのだろうか、どんな質問をされるのだろうかと、将来をイメージして予測し、計画して、それらをとどめておくような場合。
この未来に関する記憶を展望記憶といいます。
記憶のメカニズムはしばしば、コンピューターの働きに例えられ次の3つが一般的な記憶の流れ。
- 視覚や聴覚、嗅覚といった感覚器から得られる情報を取り入れる記銘。符号化とも呼ばれます。
- あなたの中に取り入れた情報を保管しておく貯蔵。保持ということもあります。
- 貯蔵された情報を取り出す検索。想起と呼ばれることもあります。
記銘は、キーボードからの入力であり、貯蔵はメモリやハードディスクに保管しておくことであり、検索は、ハードディスクに書き込まれた情報を引き出すことに例えるとわかりやすいでしょう。
このように記憶は3つのメカニズムを持つのですが、ときおりこの3つの流れにそぐわないことが起こります。
例えば、話を聞いても自分の都合の良いところだけを聞き取り覚えたり、初恋の相手が現実以上にとても美化されたりといったような変化のこと。
このように、あなたの記憶が正しいのかどうかということを調べる方法が再生という手段。
記述式の穴埋めテストのようなものを再生テスト、選択問題のようなものを再認テストと呼び、一般的には再認テストの方が正解しやすく簡単に答えることができます。
(関連記事:催眠療法の歴史。不安や悩みを取り去る催眠療法は心理学の生みの親)
記憶の種類とは
記憶の種類は、覚えていられる時間的な区分で分ける場合や、記憶の内容によって分けられる場合など複雑です。
なので、できるだけ、わかりやすく記憶の種類についてお話していきます。
記憶の3段階
記憶についてアメリカのリチャード・アトキンソンという心理学者が、記憶の3段階というものがあるということを1968年に「二重貯蔵モデル」としてアトキンソン―シフリン理論において発表しました。
この記憶の3段階とは、情報の時間的な処理過程による区分であり、感覚記憶、短期記憶、長期記憶の3つ。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
感覚記憶
まず、目や耳、鼻や口、そして、皮膚という感覚器官から入った無限ともいえる情報をごく短い時間保持されます。
この保持された感覚器からの情報を感覚記憶と呼びます。
感覚記憶は保持が困難なので、記憶に留められることが少なく、すぐに忘れてしまうもの。
アイコニック・メモリと呼ばれる視覚的感覚記憶は0.1秒~0.2秒、エコイック・メモリと呼ばれる聴覚的感覚記憶は、3~4秒。
感覚記憶が入ってくる量はとてつもなく膨大な量ですが、すぐに忘れることで意識がパンクすることを防いでいるのです。
この感覚記憶のうち、あなたが重要だとか新しく珍しいと感じる情報に注意を向けることになり、その記憶がもう一段階進むことになるのです。
(関連記事:エビングハウスの忘却曲線は式で表せるの?忘却曲線で記憶を消す方法)
短期記憶
感覚記憶のうち、あなたが注意を向けた記憶が数十秒間保持される記憶になります。
この記憶が短期記憶と呼ばれる記憶。
この短期記憶を覚えておく量やその記憶範囲には限界があり、7個±2個が限界とされていました。
この説は、ジョージ・ミラーというアメリカの心理学者が提唱した理論で7±2というマジカルナンバーとして有名です。
マジカルナンバー7とは、7±2個のチャンクなら短期記憶として覚えられるという理論。
ここでいうチャンクとは言葉のまとまりのこと。
例えば、012-345-6789のような電話番号があったとします。
この時、数字を一つづつ覚えようとすれば、10チャンクになるのですが、012を1かたまり、345をひとかたまり、6789を1かたまりとすると、3チャンクになります。
だから、ミラーのマジカルナンバー7±2をチャンクに分けると、イチゴ大福、モンブラン、ザッハトルテ、バームクーヘン、ショートケーキ、どら焼き、赤福を平均的に覚えられるということ。
ちょっとしんどいような気がしませんか?
だから、最近では短期的とはいえ、7個前後も覚えられないという説が出てきて、その後、実験を重ねて、2001年にネルソン・コ―ワンがマジックナンバーは4±1ということを提唱しました。
3~5個なら苦労しなくても覚えられるということですね。
このような少しの時間だけ覚えられる短期記憶も、リハーサルのような段階を踏むと、長い間覚えている長期記憶となります。
ここでちょっと注意しておきたいのが、記憶は保持するだけ、つまり、覚えているだけではありません。
短期記憶でも、より積極的にその覚えた内容を自分なりに解釈したり、判断したりすることがあります。
例えば、はじめてあった人と話をして、趣味を聞いたときに、同じ趣味なら、じゃあ、こんな話を聞いてみたいなというような情報を処理するときのことです。
このように、あなたが得た短期記憶に対して能動的な判断や決断をする記憶のシステムをワーキングメモリと呼ぶことがあります。
それでは、そんなワーキングメモリについてわかりやすく説明していきます。
(関連記事:運動会で気付いた催眠現象 ~あなたの記憶が書き換えられる瞬間~)
ワーキングメモリ
先ほどお話しかけたワーキングメモリとは、なにか情報を外界から得た時に、一時的に必要とされ処理する記憶の働きのこと。
あなたが記憶しようとするとき、中心になるこころの働きは、中央実行系と呼ばれるもの。
その 中央実行系は、あなたの注意を集中すること、そして、その情報を制御すること。
ちょっとわかりづらいかもしれないので、具体的に例をあげてみますね。
たとえばですが、100円ショップで商品を3つ買ったと想像してみてください。
そのとき500円玉を店員さんに渡すとお釣りをいくらもらえるかという問題を解く時、まずこの問題に注意を向けますよね。
そうして、どのように計算したらよいかを考え、長期記憶の中から、四則演算や消費税率を思い出して計算するのではないでしょうか。
くりあがりやくりさがりなどの計算に及ぶと、その金額を頭の片隅に記憶しながら、おつりはいくらなのか、という答えを導きます。
ワーキングメモリとは、記憶の記銘、保存、検索の一連の作業とその処理を行うこと。
ワーキングメモリには、このような計算の外にも、読書や会話、学習や会議・問題解決など、多くの知的活動や日常生活の基礎を作っているのです。
近頃では、ウェクスラー知能検査のように有名な知能検査でも、ワーキングメモリの能力の検査が行われるようになっています。
ワーキングメモリの容量が少ないと、子供の学習や行動などにつまづきが出やすいと言われており、少しでも、ワーキングメモリが活発に働くような教育や訓練が行われています。
こんな重要なワーキングメモリですが、リソースとして使われる長期記憶の量がどれだけ多く、また、どれだけ幅が広いのか、その多さ、広さが、ワーキングメモリの処理能力に影響を及ぼします。
それでは次に、ワーキングメモリにとっても大切な長期記憶についてみていきましょう。
(関連記事:心が身体をコントロールする「実行機能」の真実)
長期記憶
長期記憶とは、長い間覚えていることができる記憶。
寝てしまっても覚えているし、場合によっては、半永久的に覚えているような記憶が長期記憶。
この長期記憶は、短期記憶として保持された記憶がリハーサルや体制化、干渉の最小化などを通して記憶の貯蔵庫に蓄えられます。
この貯蔵された記憶が長期記憶。
おびただしいほどの数の知識やスキル、経験があなたのこころの中に長期記憶として貯蔵されています。
この長期記憶は、半永久的に保持される記憶といわれ、必要に応じて検索されたり、ふとしたきっかけで想起されたりすることがあります。
この長期記憶は手続き的記憶と宣言的記憶に分けられます。
それでは、まず、長期記憶の2つの記憶についておはなししていきましょう。
(関連記事:私ならできる!自己暗示ですごいやる気!自分に言い聞かせる効果とは)
宣言的記憶
宣言的記憶とは、長期的記憶のうち言葉で説明できる記憶のこと。
一般的な知識として意味記憶と、個人的な体験の記憶であるエピソード記憶があります。
どちらも、思い出そうとして思い出すことが多い記憶で、顕在記憶と呼ばれます。
自動的に思い出される手続き記憶とは毛色が違い、自分で思い出すことができて言葉で表現できる記憶が宣言的記憶。
(関連記事:言葉の力とは。自分に暗示をかける意味は、暗示の効果にあった。)
意味記憶
意味記憶とは、リンゴは果物、とか、日本の首都は東京といった事実や規則、言語や概念に関する一般的な知識のこと。
この意味記憶は、生活基盤の家庭での生活とか、学校の教育で学ぶことが多い一般的な知識。
意味記憶の存在価値は自分以外の他の人達とコミュニケーションを取る手段となり、客観的な世界を作り上げるための手段になります。
人は、大きくなっていくにつれて、この意味記憶の量が増えていき、関連する意味記憶同士でネットワークを構築したような状態になります。
これが意味ネットワークという記憶のシステムで、ある記憶が呼び起こされるとそれに結びついた記憶も活性化され、意識に昇ってくるのです。
(関連記事:意味ネットワークとは。活性化拡散モデルと階層的ネットワークモデルの違い)
エピソード記憶
エピソード記憶は、生活している中で、個人が経験する「いつ、どこで、何をしたか」という出来事の記憶。
意味記憶と違うところは、努力して覚えておこうとする必要がなく、自然と記憶として残るところ。
小さい時、近所の友達と日が暮れるまで遊んでいたこと、大好きな人との破局のシーンなど、後々の人生にまで残っていくような記憶がありますよね。
そんな思い出に当たるエピソード記憶のことを特に自伝的記憶と呼びます。
エピソード記憶は3歳くらいまでその覚える機能である記銘が発達していないため、生まれてから、2歳くらいまでの記憶がほとんどの人にありません。
これを幼児期健忘というのですが、3歳ころから徐々に発展して個人の主観的な世界を作り上げていきます。
こうやって、エピソード記憶は自分はどのような人間であるのかというパーソナリティを作り上げる素材。
そして、あなた自身のアイデンティティの形成につながるのが、このエピソード記憶なのです。
(関連記事:ゲシュタルト療法で感情を探るのは怖い?意味ネットワークでつながる感情の連鎖)
手続き記憶
手続き的記憶とは、手続き記憶とも呼ばれ長期記憶のうち、物事のやり方に関する記憶。
言葉では説明することが難しい知識の記憶で、折り紙の折り方や自転車の乗り方、スマホの操作やパソコンのブラインドタッチ、ダンスや水泳、車の運転や楽器の演奏などが当てはまります。
一般的に、あなたの身体にしみ込んだ技能といえるような記憶で、行動で表されるものが多いのが特徴。
そして、仕事の段取りや説得、交渉術のような認知的なスキルも含まれます。
手続き記憶は、いくつかの操作を組み合わせた一連の手順から成り立っているのですが、言葉で伝えにくいところが、その難しいところ。
この記憶、技術、スキルを身につけようとすると、教えられる側は手本を見ながら、そして、タイミングよく指導を受けながら繰り返して練習を重ねることでそのやり方、方法を身につけていくのです。
また、この手続き記憶は、一度覚えると、意識しなくても自動的にできるようになるというところから、潜在記憶の一つとして数えられています。
パブロフの犬のような古典的条件付けも潜在記憶の一つ。
(関連記事:人為的に嫌な全ての記憶を消す方法!トラウマ克服方法ヒプノセラピー)
スキーマとスクリプト
記憶の話をする時に避けて通ることのできないものが、このスキーマとスクリプト。
スキーマとは、構造化された知識のことで、意味ネットワークとして作り上げられたあなたの記憶の世界のこと。
このスキーマがあるおかげで関連する新しい知識を取り入れたり、思い出したりすることが簡単になるのです。
もし、このスキーマがなければ、あなたが覚えるものすべてが無意味つづりとなり、その記憶に要する時間や労力は今以上に増大し、苦労することになるでしょう。
このスキーマとは、いってみれば、あなたが発達するために先祖から伝わったものを覚える方法なのです。
ただし、スキーマは、効率的な記憶の方法である一方で、記憶をゆがめてしまう危険性もあります。
フレデリック・リチャード・バートレットというイギリスの心理学者が実験したものですが、イギリスの大学生にネイティブ・アメリカンの民話を聞かせたところ、なじみのないところは忘れてしまい、理解しやすいところだけ記憶に残ったのです。
また別の実験で、エジプトの象形文字を大学生に見せてさらにほかの大学生に伝えてもらったところ、その結果はいつの間にか見慣れた猫の絵になっていました。
このように、人はなじみのない情報に出会うと、自分のスキーマに合うように、記憶内容を変えてしまうのです。
このことをバートレットは記憶の再構成と呼んだのですが、この記憶の再構成は、文化によっても違う反応が生じることがわかっています。
このようなスキーマのうち、時間的な流れを持っている行動に関する知識がスクリプト。
決まった場面で使われるシナリオのようなもので、レストランで起きるレストラン・スクリプトが有名。
あなたがレストランに入った時には、席を探して、空いている席に座り、メニューを見て注文し、食事がでてくるまで待って、食べて、席を立って支払いをするという一連の流れがありますよね。
この一連の流れ、行動系列にレストランスクリプトといいます。
こうした時間的な順序がある知識は、生きていくうちに経験の増加とともに増えていき、スムーズに日常生活をおくることができるようになる技術。
レストラン以外でも、買い物をしたり、電車やバスに乗ったり、学校で授業を受けたり、仕事に行ったり、病院に行ったりといろいろな時間の流れを持った知識がスクリプト。
このスクリプトの種類が増えていくにつれていろんな場面や複雑な状況にも対処できるようになっていきます。
ただし、スクリプトはスキーマと同じで、習慣や文化によって得られる知識なので、あなたが得たスクリプトがいつでもどこでも通用するわけではありません。
異文化の間で起きる摩擦や衝突はこうしたスクリプトの違いや行為の解釈、評価の違いが元になっているとも言われています。
それでは、記憶の種類について見てきましたので、つぎに、その記憶を忘れずに覚えておく方法、保持する方法をお話しします。
(関連記事:嫌な記憶を消す技術。催眠状態を使って人為的に記憶を消す方法とは)
記憶を保持する方法
記憶を保持する方法は、記憶方略といわれます。
この記憶方略はたくさんの情報をより効率よく覚える方法。
必要な時にすぐに思い出すことができるようになる記憶方略を4つ紹介しましょう。
リハーサル
まずは、比較的簡単なリハーサルという記憶方略で、記憶を定着させる方法。
手続き的記憶にしても、宣言的記憶にしても、覚えておかなくてはならないことを繰り返すことで覚える方法がリハーサル。
忘却曲線で有名なエビングハウスは、無意味つづりを記憶した後、1日経つとかなりの量を忘れているけれど、記憶した時点からすぐの段階でリハーサルすると、再学習の時間が短くなるということを見つけています。
また、10個くらいの単語を一つづつ見せたあとに、もう一度思い出してもらうと最初の方の単語と最後の方の単語が思い出しやすいという系列位置効果があります。
この系列位置効果で最初に聞いて覚えやすくなることを初頭効果、最後のものが記憶に残りやすいということを親近効果と呼んでいます。
さらに、しばらく時間がたってから思い出そうとすると親近効果は薄れてしまい、初頭効果の方が残ります。
これは、恋愛で別れてしまった時のことを思い出すとなんとなくイメージがつかめるのではないでしょうか。
破局の時点がどうあれ、恋愛の最初の時期、はじめてであった時のことをいつまでも覚えていることが多く、気持ちの整理がつかなくてなかなか忘れられないというのも、ここに、その原因があるのです。
初頭効果が残りやすいのは、最初のうちに起こったことは相対的にリハーサルの回数が多くなるため、長期記憶に移行しやすくなります。
これに比べて親近効果は、リハーサルが少なく短期記憶のままなので、直後であれば思い出しやすいのですが、時間がたつと薄れていくのです。
リハーサルが記憶するための方法だと言っても、ただ単に念仏のように繰り返すだけでは最初の部分しか覚えられず、すべてを記憶しにくくなります。
なので、記憶する内容を分析したり、自分の体験と結び付けたり、視覚的なイメージを思い浮かべたりして覚える内容に意味を持たせましょう。
この意味を持たせて記憶する方法を精緻化リハーサルといい、数字や年号を覚える時に語呂合わせをする有意味化、覚えるべき内容を場所と結びつける場所法、単語を繋げて物語に仕立て上げる物語法があります。
また、一点集中で経験したり学習したりするよりも、分散して何度も繰り返す方がより効果的。急いで詰め込んだ一夜漬けの知識は定着せず、忘れやすいものなのです。
(関連記事:嫌なことを忘れる方法!恋愛で好きな人を忘れられない人の解決方法)
体制化
次にお伝えするのは、体制化という方法。
楽に記憶しようとするとチャンクやスキーマをうまく活用しながら、整理して覚えることが大事。
チャンクとは言葉のまとまりのことで、ヒプノセラピーを例に挙げてみると、ヒ・プ・ノ・セ・ラ・ピーだと6チャンクですが、ヒプノ・セラピーだと2チャンク、ヒプノセラピーだとチャンクとなります。
チャンクは少ない方が記憶しやすいですが、適度な長さとするのが効果的。電話番号がハイフォンで区分けされているのを思い出してもらえれば分かりやすいでしょう。
そして、こうやって、情報同士を意味のあるまとまりごとに分けて、相互に関連付けて階層構造にしていくことを体制化といいます。
ランダムに単語を見せて記憶させた場合より、動物や魚、職業や乗り物などといったカテゴリー別に見せて記憶させた方が、3倍ほど記憶量が高まるという実験結果があります。
また、教科書や参考書、ウェブサイトなどの知識を伝えることを目的とする文章は、体系化されて書かれており、章や節ごとに見出しを付けています。
このような体系化された書き方も、理解しやすいように工夫された階層構造。
このような便利な体制化ですが、自発的にできるようになるのは、児童期半ば以降なので、小さい子供には親や先生がそれぞれの知識を関連付けてあげたり、視覚的に階層構造を見せてあげるなどをして、子供のスキーマを大きくしてあげる手助けが必要。
体制化を意識してノートを整理したり、模擬テストをやってみるのも有効な手段です。
テストは評価するためだけでなく、知識を体系化して定着させるという意味もあるのです。
なぜなら、情報を検索する機会が多ければ多いほど、情報が記憶として定着しやすいから。
部屋がごちゃごちゃしていると欲しいものが見つからないということがあるのではないでしょうか。
知識を整理して階層化しておくという体制化は、必要な時にあなたの記憶を引き出しやすくする方法なのです。
(関連記事:嫌な記憶を消す技術。催眠状態を使って人為的に記憶を消す方法とは)
干渉の最小化
次にお話しするのは、干渉の最小化という記憶方略。
学んだことを忘れてしまう原因には、学習した内容がおたがいに干渉しあって思い出せなくなるということがあります。
以前に記憶した内容のために、新しい記憶が思い出せなくなることを順向抑制といいます。
携帯のアプリのパスワードなんかが良い例で、古いほうはすぐに思い出せるのに、新しいほうはなかなか覚えられないという経験はないでしょうか。
この順向抑制とは反対に、後から得た記憶のせいで、以前に記憶したことが思い出せないという現象がありそれを逆行抑制といいます。
これは、いつも通る道で新しい店がオープンした時に前に何の店が入っていたか思い出せないという経験のこと。
このように、記憶の干渉は、記憶したことの内容が似ている時や、記憶自体が不完全な時、また、学んだ時が近い場合などに起こります。
この記憶の干渉を防ぐには、似たような内容を続けざまに覚えたり、いろんな課題を同時に処理するマルチタスクで処理したりすることを避けるべき。
また、眠ることでの記憶の干渉を最小化することができます。
これは、10個の無意味つづりを覚えた後、睡眠をとった場合と、睡眠をとらずにいた場合を比較した場合、睡眠をとったほうが忘れやすいという結果がジェンキンズとダレンバックの実験で明らかになりました。
これは、覚醒していると情報が多く入ってくるため、逆行抑制が起こっているのだとされ、干渉説と呼ばれています。
最近のシュクリンとマクダニエルの研究で寝る1時間前に覚えた情報は逆行抑制の影響を一番受けにくいことがわかっています。
また、ラッシュとボーンの研究で睡眠することで記憶が残りやすくなるという結果が明らかになりました。
よく眠ることは、子供にとって大切なだけではなく、大人にとっても重要な営みであると言えるでしょう。
さて、干渉が記憶にとって悪影響を及ぼすところを見てきましたが、学ぶこと同士が妨害しあうとは限りません。
昔に記憶したことが後から記憶することを助けることもあるのです。
これを正の転移といい、似たような言語を学ぶときに起こりやすいと言われています。
簡単に例をあげてみると、ヒプノセラピストと聴いても分かりづらいけれど、ヒプノ(催眠)+セラピー(療法)+スト(~する人)という言葉を知っていれば、なんとなく意味をつかみやすく覚えやすくなるということですね。
(関連記事:心理カウンセリングやセラピーと心療内科(病院)との違いとは)
検索手がかりの活用
次にお話しするのは、検索の手がかりがあると思い出しやすくなるということ。
人の記憶とはバラバラに覚えられているのではなく、関連するもの同士が結びつき、インデックスを付けられて無意識という心の中にしまわれています。
年齢を重ねるごとに舌端現象という喉元まで出かかっているのに思い出せないという現象が起こり始めます。
ですが、こんな状態になっても、手掛かりがあれば、「ああ、そうそう。」と思い出しやすくなるでしょう。
単語を記憶する場合でも、何も手掛かりがない時よりもカテゴリー名を付けたほうが思い出す数が増えるという実験結果もあります。
あなたが普段なにげなく暮らしている時でも、何か用事があって部屋に行ったのに、何をしに来たか思い出せないという経験はありませんか?
この時、元の部屋に戻るとその用事を思い出すことができることがあります。
これは、情報を記銘、認識するときの場所や雰囲気などの文脈が手掛かりとなっているのです。
このように、文脈を手掛かりとして必要な記憶を思い出すことが文脈効果。
小さかった時のことのように、普段は意識にのぼってこないような記憶でも、通学路を通ったり、幼馴染に再会したらその時のことを思い出すのではないでしょうか。
文脈効果と似たような効果に、気分一致効果というものがあります。
その記憶となる状況に出会った時と同じ気分になるとその時の記憶を思い出しやすくなることが気分一致効果。
例えば、落ち込んでいる時は、つらかった出来事や不快な経験を思い出しやすくなるし、気分が良い時は、楽しかった思い出を思い出しやすいもの。
また、今の気分も過去の出来事の意味付けに影響を及ぼすことがあります。
良い気分の時には、昔起こったことを良い意味でとらえやすく、沈んだ気持ちの時は、同じ出来事でも、悪いようにとらえやすい。
出来事には善悪はないけれど、気分次第でその出来事の意味付けをしてしまうのが人間なのです。
(関連記事:最古参「ヒプノセラピー(催眠療法)」と最先端「認知行動療法」の共通点とは)
まとめ
以上、「記憶のメカニズムを心理学で解明する。~記憶の種類とは~」についてお伝えしました。
記憶の種類は感覚記憶、短期記憶、長期記憶の3種類で、忘れられない記憶になるのが長期記憶。
そんな記憶も、思い出すためには想起という手続きが必要で、繰り返したり、整理したりすると覚えやすくなり、記憶同士が干渉しあうこともあり、手掛かりなどがあると思い出しやすくなります。
記憶はあなたのこころの中に張り巡らされた意味ネットワークで構成されているので、そのネットワークを使いこなすことが記憶を自由に扱う方法になるでしょう。
催眠療法は、この長期記憶に触れる心理療法。
催眠によって変性意識状態というトランス状態に入ることで、普段は意識下にあり表面に出てこない長期記憶である無意識に触れることが可能に。
ヒプノセラピー、催眠療法は、心の中に眠る潜在意識にコンタクトする心理療法。
あなたの記憶の意味ネットワークを自由に駆け回ることができる変幻自在なカウンセリングが催眠療法なのです。
(関連記事:ヒプノセラピー ~催眠療法のススメ~ あなたの脳と心に働きかける最強の心理カウンセリングとは)
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