心が身体をコントロールする「実行機能」の真実

みなさん、こんばんは。

催眠を心理学で科学する、「催眠心理学」

ヒプノセラピー(催眠療法)のベレッツア 高橋です。

 

あなたは、何か行動するときの心が働いていることを知っていますか?

右手を上げようとするとき、頭が命令を出して、神経を通り、右手の筋肉に指令が届き、右手を上げるようになります。

 

何かしようとする際には、ほとんどの場合、何か考えて行動しますよね。

この「何か考えて」という心の働きと「行動する」という身体の働きとの間には、どんな関係があるのでしょうか。

 

今回は発達心理学の観点から、その心と身体との連携「実行機能」について焦点を当てて話していきたいと思います。

 

 

心と身体を結ぶ「実行機能」(executive function)

さて、こころとからだを結ぶ機能というものがあります。

心理学の世界では、それは「実行機能」と呼ぶもので、そのシステムがあなたの考えていることを体に伝え、身体を動かすことになります。

 

あなたは日常何か物事に反応して行動しようとするとき、どういった循環になっているでしょうか。

ちょっとここで、細かく見ていきましょう。

 

まず、なにか外界から刺激があります。

例えば、道を歩いている時に前から車が来るとしましょう。

 

このままであると、ぶつかり、轢かれそうな場面です。

想像できましたか?

 

この時の外界からの刺激とは、前から車が来ることによる、「車がこちらを向いているのが見える」、「音が近づく」、「ライトがまぶしい」といったような「知覚」です。

この「前から車が来る」刺激を受けて、あなたは、どう行動するでしょうか?

 

まっすぐそのまま歩きますか?

それとも、少し道路と反対側によけますか?

 

恐らく、「車とぶつからないようによける」という判断するのではないでしょうか。

本来であれば、まっすぐ前に進みたいのだから、よけずにまっすぐ歩くというのがあなたの考えですよね。

 

それを捻じ曲げて、まっすぐ歩くことを止める。

この、自分のしたいことを取りやめるという行為が、「抑制」と呼ばれる機能で「実行機能」のうちの最初のプロセスです。

 

次に、よけるという行動をとる場合、

当初、前に進もうと考えているところから、車にぶつからないようによけようと、自分の考えを別の次元に移します。

この「前に進む」という考えから「よける」という考えに移すことを「シフティング」と言います。

これが、「実行機能」の二つ目のプロセスです。

 

そして、実際に前に進むという判断から、よけるという判断に従って、自分の行動を「車をよける」という動きに変化させます。

これは、「更新」という、実行機能の三つ目のプロセスです。

 

実行機能とは、この「抑制」、「シフティング」、「更新」三つのプロセスから成り立っている、自分の認知とそれによる行動の制御に関する重要な機能なのです。

 

 

実行機能の一つ目、抑制(inhibition)

 先ほどお話ししたように、「抑制」とは、ある状態で優勢な行動や思考を抑えるプロセスとして定義されています。

言い換えると、「抑制」とは自分がしたいことを諦め、手放すことです。

 

したがって、この機能が課題になる、つまり、抑制することになってくると、心に大きな負担(ストレス)がかかります。

  • 学校から宿題をいっぱい出され、遊びたいけど勉強をする、
  • 職場に行ってお茶を飲んで休憩したいけど、仕事が片付かないからこれが片付いたらと、仕事を続ける、
  • 家でのんびりしたいのに、片付けろ、と言われ、渋々、部屋を片付ける。

どう考えてもストレスが溜まりますよね。

 

こんなストレスフルな「抑制」ですが、

こんな研究結果があるのです。

 

マシュマロ課題

マシュマロ課題というものなのですが、

幼児にマシュマロを渡し、

実験者
今から私はこの部屋を出るけど、その間に、このマシュマロ、食べたかったら、すぐに食べてもいいよ。でも、もし、私が帰ってくるまで食べずに待っていられたら、倍の数のマシュマロを上げるね。

と言って立ち去るのです。

 

あなたは、この時、渡されたマシュマロをすぐに食べてしまいますか?

それとも、実験者が帰ってくるまで待ちますか?

 

どちらが正解ってことはないのですが、3歳くらいまでの子供は、実験者が帰ってくるまで待てずにマシュマロを食べてしまいます。

つまり、「抑制」の機能が十分に発達していないのですね。

 

その後の追跡研究により、「マシュマロを食べずに待っていられる子」の方が、「食べてしまった子」よりも学業成績が上という結果が出ています。

つまり、自分の欲望をコントロールできる人の方が学業成績が良かったという結果。

 

あらためて、問いますが、あなたは、マシュマロを食べますか?

それとも、マシュマロを食べるのを待っていますか?

 

ストループ課題

もう少し別のお話をしましょう。

ストループ課題という実験があります。ちょっとこのストループ課題という実験を実際に体験してみましょう。

 

次の三種類のカードがあります。

一つ目のカードが

「赤」「青」「黄」「緑」「橙」

と、黒字に色が書いているカードです。

 

二つ目のカードが

と、色と文字が一致したカードです。

 

三つ目のカードが

と、色と文字がちぐはぐなカードです。

 

さあ、次のカードに書かれている色を読み上げてみてください。

「赤」「青」「黄」「緑」「橙」

 

特に問題ないですよね。

 

つぎに、同じように書かれている色を読み上げてください。

」「」「」「」「

 

これも支障はないかと思います。

 

さらに進みましょう。

同じように書かれている文字を読み上げてください。

」「」「」「」「」「」「」「」「

いかがですか?

ちょっと読み上げる時に詰まる感じが味わえたでしょうか。

 

さらに、もう一度さっきのカードですが、今度は文字ではなく、その色を答えてください。

」「」「」「」「」「」「」「」「

 

さて、どうでしょうか。

4回実験をしましたが、いかがでしたか?

 

今回のストループ課題という実験ですが、多くの人が1番目の問題より2番目、2番目の問題より3番目といったように、上から順番に読みづらくなっていく(時間がかかる・間違う・詰まる)ことが明らかになっています。

これは、自分が思っている事と違うことをしようとすると、うまく心と身体が働かない。

 

つまり、心と行動の間に差があるほど「抑制」の機能が働きにくくなる

言い換えると、感じたことや思ったことと違うことをすることは、とてもストレスフルな行動になる、ということになります。

 

抑制は、「葛藤」と「遅延」の二つに大きく分かれますが、ストループ課題は「葛藤」の側面を表していると言えます。

遅延については、マシュマロ課題が該当していると言えるでしょう。

 

あなたが、ここまで聞いていただければ、マシュマロを食べずに我慢出来たら成績が上がる。

でも、その分、心に大きな負担、ストレスがあなたの心にのしかかっていくということになります。

 

 

実行機能の二つ目、シフティング(shifting)

次に実行機能の2つ目のプロセス、「シフティング」についてお話ししましょう。

シフティングとは、ある次元から別の次元に思考や反応を柔軟に切り替えるプロセス

 

ここでシフティングを説明するのにちょうど良い実験を紹介しますね。

それは、子供向けの課題なのですが、DCCS(Dimensional Change Card Sort)課題と呼ばれているもの。

 

どういう実験かというと、カードを指示通りに区別して仕分けできるかどうかという実験。

DCCS課題を説明しますと、「赤い車」と、「青い花」というカードがあって、それを色で分けらることができるか、または、書かれているもので分けることができるかという実験です。

 

どんなものか実際に見ていただければわかると思いますので、下の動画をご覧ください。

 

英語版なので、少々戸惑ったかもしれませんが、動画の最初の部分は、色別に分けるように指示して、例を示し、それができるかどうか見ています。

ちゃんと「color game」や青いカードを持って「blue one」と言っているところから、できるだけ間違わないような気づかいも感じられますよね。

 

童画の次の部分は、ゲームのルールを「色で分ける」から、「書かれているもので分ける」と変化させています。

「よく考えてね」とか、「これは花である」と言って渡しているところからも、子供がゲームのルールを間違えないような配慮がうかがえます。

 

でも、この子供は、前のルールのまま、色で分けてしまっています。

つまり、これくらい(だいたい3歳くらいまで)の幼児は考え方を切り替えるという、「シフティング」の機能が完成していない、ということがわかります。

 

こんなバカな!
この子供だけが特別なのでしょ?

と思われるかもしれません。

ですが、この実験はほとんど成立しており、これが一般的な事実なのです。

 

幼児はまだシフティングの機能が完成していないと述べましたが、では、年を重ねるとシフティングの機能が作り上げられていくのでしょうか

これは、一概にそうとは言えません。

 

周りの人を見て、

あれ、もうちょっと、こんな考え方をしたらいいのにな

とか、

あの人、頭が固いな。切り替えたらいいのに。

とか思ったことって、一度や二度ではないですよね。

 

こんな時に、そのような行動をとる人たちは、そのことに関して、まだ、シフティングの機能が完成していない、つまり、幼児のまま、ということなのです。

悩み事や、うつ病などは、ある一側面にこだわりすぎて、(例えば、自分は暗い性格である、人間関係が下手だ、生きている価値がない、など)より深い悪循環に陥ることがあります。

 

もしかすると、シフティングがうまく機能すれば、その悪循環から脱出できるかもしれません

さて、あなたの「シフティング」、大人ですか?それとも子供ですか?

 

 

実行機能の三つ目、更新(updating)

 

さて、実行機能の最後のプロセス、「更新」の話に移りましょう。

更新とは、「ワーキングメモリ」に保持される情報を監視し、更新する能力と定義されます

(ワーキングメモリについてはこちらを参照。)※リンク不備のため若干補足説明します。

ワーキングメモリとは

ワーキングメモリとは、短期記憶の一つです。

古い心理学では、短期記憶と同意であるが、最近の心理学の傾向として、短期記憶は記憶の部分のみに焦点を当てた表現として使われ、ワーキングメモリはその記憶の操作を含めたもの。

 

人間の記憶は初恋の相手のことのようにずっと覚えている長期記憶と、買物の時の金額計算結果のようにすぐ忘れる短期記憶に分けられます。

短期記憶ののように「忘れる」という処理ができないと、頭の中が情報でいっぱいになってしまいます。

 

もし、忘れることができなければ、頭の中が思考だらけになって、思い出したい記憶がすぐに出てこなくなったり、脳が処理しきれなくなってパンクしたりしてしまいます。

デフラグされていないハードディスク、といった状態ですね。

 

さて、補足説明の通り、ワーキングメモリは、記憶+処理です。

あなたの普段の生活には、いろんな情報が飛び交っていて、目を開ければ、実にいろいろなものがあなたの視界の中に飛び込んできます。

 

寝転んでいるから天井が見えるだけだよ

という人も、いるかもしれません。

ですが、本当にそうでしょうか。

 

天井の模様一つ一つに目を向けると、いろんなものが見えてきませんか?

シミやほこり、傷や汚れ。電灯や、あるいは蜘蛛の巣が見えるかもしれません。

 

このように、本来は見えているもの(知覚した情報)を記憶にとどめ、不要な部分を削除していく、またはその記憶を保存して(覚えておいて)、

天井が黄ばんできたな。掃除したいな

と新たな情報を付け加えていくという情報の取捨選択と更新処理が日々刻々と行われているのです。

 

この能力は、言葉の逆唱課題という実験で明らかにすることができます。

言葉の逆唱課題とは、「さくら」「すみれ」「あやめ」といった言葉を提示し、その言葉を「あやめ」「すみれ」「さくら」という風に逆唱してもらうという実験。

 

この結果、ワーキングメモリの容量がどの程度であるかということを知ることができます。

大人でも結構難しいので、幼児にはほとんどできなくて、3~4個できるようになるのは4~5歳くらいと言われています。

 

 

実行機能と心の理論の関連性

この実行機能は多くの実験結果から、心の理論(詳細はこちら>>心理学の基礎「心の理論」)は、成立する時期が4~5歳と時期が重なっています。

この両者の関係性について、最近の心理学界では、多くの研究で検討されています。

 

現在分かってきていることは、

  • 葛藤抑制の課題成績と誤信念課題の成績が相関していること。
  • 心の理論の発達にとって、抑制の制御が重要であること。
  • シフティングや更新と言ったプロセスと心の理論に相関関係がある

ということが明らかになっています。

 

つまり、

実行機能と心の理論は関係が深そうだ

ということです。

 

このことで、4~5歳にならないと正答することができないという標準的な誤信念課題(サリーとアンの課題、こちらを参照)と赤ちゃんでも誤信念課題を理解できるという矛盾を説明できます。

 

サリーとアンの課題の場合、実験群は入れ替えられたことを知っています。

つまり、知っていることを抑制して、心の理論を働かせなければいけないのです。

 

抑制は多大なストレスを生み出すもとになる。

その上、言葉で表現するという高度なプロセスが加わります。

 

ストループ課題で明らかなように、心と実行がちぐはぐになった時、とてつもないストレスと、実行への抵抗が生まれるのです。

小さい子供ができないのは、当たり前、と言えるのかもしれません。

 

ここで、ベイラージョンという人を紹介しましょう。

 

このベイラージョン教授らが実施した誤信念課題に関する調査があります。

言葉での反応を調べる標準的な誤信念課題では、少なくとも、3つのプロセスが必要になるということ。そのプロセスとは、

  • 他の人の考え、感情を感じとる(誤信念表象プロセス)
  • 言葉で反応するときには、他の人の感情に対し、自分に都合のいい部分だけを理解する。(反応選択プロセス)
  • 自分の知識を抑制して質問に答える(反応抑制プロセス)

の3つ。

 

それに対して、赤ちゃんに対する誤信念課題のように、じっと見るだけの「注視」と言った「自発的な反応で調べる誤信念課題」では、誤信念表象プロセスだけで対応可能といった調査結果が出ています。

 

この時に挙げられる「反応選択プロセス」や「反応抑制プロセス」はまさしく、実行機能です。

この調査結果も、実行機能と心の理論に相関があることを証明しているでしょう。

 

 

おわりに

 

今回は「心が身体をコントロールする「実行機能」の真実」ということで、人が行動するときの要となる「実行機能」についてお話しさせていただきました。

実行機能も心の理論も心理学では、4~5歳にかけて発達するという見解があります。

 

ですが、あなたの身の回りにもいるかもしれませんが、

  • 頭の固い人、
  • 自分の意見を曲げない人、
  • 言い出したら聞かない人、
  • 常識から抜け出せない人、
  • 自分の価値を見出せない人、

そんな実は子供のまま、精神的に発達しきれていない大人、つまり、実行機能、心の理論が発達しきれていないと言えるのではないでしょうか。

 

今回の実行機能は乳児から幼児への発達の心理学という観点からの話ではありますが、大人の心の問題にも多い話ですよね。

心と身体、そして、行動は切っても切り離せない関係です。

 

いわば、コインの表と裏。

表ばかり見て、「わかった」というのは、ちょっと早合点になる可能性がある。表だけでなく、裏も認知してこそ、初めてそのコインのすべてが分かるのです。

 

実は、あなたが表を見ているそのコインの裏を見ることができるように手助けするのがセラピー。

自分の背中は自分で見えないけれど、鏡を使えば見えますよね。

 

その鏡になるのが、カウンセリングであり、ヒプノセラピーなのです。

言葉でアプローチする、普通のカウンセリングやセラピーはどうしても、「言葉に変換する」というプロセスが付きまといます。

 

ストループ課題でもわかることですが、「言葉への変換は大きなストレスを伴う」もの。

ヒプノセラピーは、あなた自身であなたの心の中の真実を見つける旅。

 

そこはイメージの世界であり、言葉は必要ありません。ヒプノセラピーでは、言葉に変換する必要がないのです。

だからこそ、深層心理に直接できる、ヒプノセラピー、催眠療法がカウンセリング、セラピーの中で最強。

 

あなたが、神戸ヒプノセラピー 催眠療法ベレッツアの門をたたく日をお待ちしております。

 

 ベレッツア 高橋

 

 

 

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