心理学を勉強していると、時々、なんて難しいのだろう、と思うことがあります。
いろいろ理論を勉強して、いざ使おうとしたときに、実際の人間的な行動に触れた瞬間。「あれ?思ったとおりいかない、聞いていたのと違うじゃん。」となることもしばしば。
ではなぜ、心理学はこんなにも難しく感じることがあって、実際と理論とがくい違うことがあるのでしょうか。
実は、この疑問、解決すれば、思ったよりも簡単で、全然難しいと思う必要がないのが心理学。なので、そんな疑問についてお話していきます。
心理学とは
心理学とは、心の働きを科学的に研究しそれを解き明かす学問です。
そこに至るアプローチとして客観的な行動心理学と、主観的な臨床心理学があります。
現在では心として見えない部分だけではなく、脳の機能との関連性にも着目され最近の科学の発達により、NIRSなどの計測器を使って解明される脳科学と連携した心理学の発展も著しいものがあります。
また、心理学として単独の学問から、哲学や宗教学だけでなく、交通や犯罪などの社会科学や経済学への展開され行動経済学の発展など多岐にわたる学問へと変化してきました。
心理学は学問としての歴史は100年ほどしかないため、理論系統はまだ混とんとしておりますが、現実的には日進月歩で進化していますから、これからも注目するだけの価値がある科学分野だといえるでしょう。
参考:心理学(Wikipedia)
心理学が難しい理由
まず、なぜ心理学が難しいといわれるのか、またその理由についてみていきたいと思います。
心理学とは統計学の上に成り立つ学問
心理学は大学とかで講義があるように、実は学問です。根拠のないふわっとしたスピリチュアルでも当たるも八卦当たらぬも八卦のような占いでもありません。
数学や物理学が難しいように、学問である以上、簡単ではない、ということです。
しかも、教える場所は大学とか大学院であり、高等教育の部類なので、そこから考えただけでも、感覚的に理解できる幼稚園児への算数レベルの話ではないことが分かるでしょう。
心理学は科学である以上、なんとなく、ではだめで、そこに根拠が必要となります。なので、心理学では仮説を立ててその仮説を立証するために実験などで膨大なデータを取得し、理論を確立し、再現性を確認したうえで実証するという手続きを踏みます。
つまり統計の上に成り立つ学問であり、心理学が学問として存在するのは統計学を利用してその存在を証明しているから。
なので、どうしても理論的、学術的になり、普通の市民である私たちにはとっつきにくい分野になってしまうのです。
人間の心は十人十色
また、人間の心は十人十色。十人いれば10の解釈、10の真実が生まれます。同じものを見ても同じように感じるわけではありませんし、同じ意味を受けるわけでもありません。
たとえば、今こうして読んでいただいている記事に対しても、そうだよね、と思う人もいれば、そんなわけない、と思う人もいますし、何を言っているのかさっぱりわからん、と思う人もいるでしょう。
同じ映画を見て素敵な主人公に感動したとしても、主人公の行動に感銘を受けることもあるし、考え方に共感を覚えることもあります。
ほかの人と全く同じ印象を受ける、といったことはほぼないといっても過言ではないほど、外界からの情報の受け取り方は複雑で、その意味の理解も無数にあるのです。
そう考えていただければわかるように、人間の心を学問的に理解しようとする心理学は難しくならざるを得ないのです。
圧倒的な人間の数
そして、圧倒てきな人間の数も心理学を難しくする原因の一つ。世界の人口は77.5億人いるわけですし、日本の人口だけを見ても1億2千万人。
これを十人十色理論で考えてみると、世界中に77.5億の考え方があり、日本だけでも1億2千万のとらえ方があるわけです。
それを統計学的に理解し理論立てていこうというわけですから、その考え方はどうしても複雑になり、例外も生まれるし、その仮説が正しいのかどうかというと、たぶんそうじゃないかな的な説明になるわけです。
これを簡単にするほうが難しく、難しくないわけがないのです。
文化、習慣
同じ人間でも、文化や習慣がかわると、考え方も変わってきます。新興宗教にはまって、人生を転落する人がいるのを考えるとよくわかるかもしれません。
もう少し深く考えてみましょうか。双子でも何でもいいのですが、全く同じ人が二人いたとしましょう。遺伝子レベルで全く同じであっても、違う環境で育てば、全く違う考え方の人ができ上がります。
たとえば、お金持ちの家で大切に育てられた場合と貧乏な家で両親共働き、バイトでもしてお金を稼ぐことのほうが大切だと育てられた場合を想像して比べてみてください。全く違う結果になるはずです。
映画プリティウーマンのように環境や状況が変わるだけでも相手に対する思いが変わるように、文化や習慣などが変わるだけでおそらく違いが生まれることは明白でしょう。
遺伝的な要素に付加される文化や習慣などの環境的な要素。氏か育ちかといった論争は今でも続いているようですが、根本的にはどちらも要因があるのですが、同じ人間だとしても文化や習慣、そのほかの環境によって変化するというのも人間心理の一側面です。
二面性の存在
また、人間には二面性があります。意図してマスクをかぶっていることもあれば、意識せずに多面性といってもいいかもしれません。
こういうと分裂症のように聞こえるかもしれませんが、同じ人であっても同じ瞬間に違うことを考えることもあるのです。
たとえば、本人の目の前では「あなたは素晴らしい人ね」といっていながら裏に行くと、「あの人ってこんなのなのよ」と陰口を言っている場合、その二面性は明らかでしょう。
ほかにも、学校で宿題を忘れたことを先生が怒って廊下に立たされたとしましょう。今ではもうない風景かもしれませんが、そんな時に、感じることは先生への怒りかもしれませんが、同時に自分が宿題を忘れたことに対する反省もあるでしょう。情けなさや悔しさも生まれるかもしれません。
このように、一人の人は一つの同じ考え方である、と思いがちですが、そうではありません。
基本的には人間は阿修羅であり、気分によって変わることもあります。
また、今理解できなくても時間がたてば気づくように時間軸で変化することもありますし、何か体験したときに意味がつながることも少なくありません。
そう考えると、一人の人間でも多面性を持っている、としても不思議ではないということがわかります。
つまり、一人の人間だけでもいろいろな解釈や理解、そこから生まれる真実があるので、朝感じたことと、夕方に思ったことが全く違うこともあり、人間の心理は複雑極まりない、ということも心理学が難しい理由の一つです。
心の学問である心理学は多次元の高次方程式
以上のように考えてみると、人間の心の動きを理論立てて学問にするためには、多次元の高次方程式を解くようなもの。
数学で、Y=aを解くのは自明の理屈でこれが唯一無二の状態。で、変数が一つ生まれるとy=ax+bとなって図で示すと直線状のどこかにいることになって一貫性を保っていることになります。
ですが、人間の多面性や環境の変化、習慣の違いなどを組み合わせるとその変数は無限に増えていき、y=axn+bxn-1+cxn-2・・・となっていきますから、グラフで表現するとぐにゃぐにゃの線。で、そのどこにいるかもわからず、どちらに進んでいるかもわからないなら、もうこれでは答えが全く予測不可能で、何が何だか理解不可能。
さらにいうと、高次方程式には、「解なし」というものもあり得るわけですから、答えは無数にあるわけです。
ある一瞬ではy=(x-a)nとなって答えが一つになることもあるのですが、それはグラフのほんの一瞬、わずかな一点にしか過ぎないのです。
そんな高次の方程式を仮説立てて、実験をして、データで検証し、再現性を確認する、といった作業が心理学なのですから、複雑なのは当たり前。難しくならないほうが不思議です。
本当は心理学は難しくない?
というようにお伝えしてきましたが、実は心理学は難しくなくて、簡単なんです。
なぜかというと、人間には生き物としての特徴があるから。生存したい、という欲求は本能的に備わっており、そこに焦点を当てて個人を見る限りは当たり前の行動をとっているのです。
たとえば、褒められたらうれしくなるし、称賛されたら晴れ晴れした気分になりますが、反対にけなされたら腹が立ったり落ち込んだりするのが人間だからです。
一般性を持たせようとして正確な理論を作る学問としては確かに難しいかもしれませんが、そこから導かれた人間性を知ったうえで一人の個人に当てはめてみると結構見えてくるもの、理解できることが出てくるのです。
脳の欠損などの器質性の異常による精神障害を持った方に対する理解となるとちょっと違いますが、それは既存の理論で片づけることができることが多いものであり、基本的には一般の心理療法を行うセラピストが応対する相手ではなく、投薬や施術を行える専門の医療従事者が対応すべき人々です。またあなたが心理職でないならば、なおさら、何が起きるかわからない相手は対象とすべきではありません。
つまり、身体的に健康な普通の人に対して相手と同じ立場で同じような経歴をたどったと仮定すれば、その結末になるのは傾聴し相手の立場を想像することで複雑怪奇な心理学の高次方程式は不要となり、相手を理解することが可能になるのです。
まとめ
「心理学はなぜ難しいのか。その理由は統計学?」についてお伝えしました。
ここでナポレオン・ヒルの言葉を借りて、「思考は現実化する」とすると、であれば、難しいと思えば難しくて簡単だと思えば簡単になるのがこの世の常です。
なら、心理学が難しい、と考えるより、目の前にいる一人の人間を理解するのは簡単だと考えるほうがいいと思いませんか?
人間は、神様のように万能ではないのですが、心理学で何でも片づけられるとおごり高ぶって一つの理論にこだわらないこと。そして、すべての可能性を考えながら取り組むことで、心理学は難しいという考えから脱却できるのではないでしょうか。
関連記事:NLPとは自然に言語を処理してしまう心理学的コミュニケーション法
コメントを残す