思春期は、子供の身体から大人の身体へと身体の変化が始まる時期。
それにともなって、思春期はなぜだか、イライラしがちで反抗期になることが多い時期でもあります。
思春期に起こる身体の変化は、今までの子供の状態から強制的に大人になってしまうこと。
思春期の心理的特徴とイライラして反抗期になる意味とはどんなところにあるのでしょうか。
思春期とは
思春期とは、小学校中学年から高学年の時に、第二次性徴が起こる時期。
第二次性徴とは、背が伸び、男の子はひげが伸びたり体つきがたくましくなったりする時期で、女の子は、月経がはじまって体つきが中性的な子供の状態から女の人っぽい身体に変化していく時期。
つまり、思春期とは、身体の変化が起こることで、今までに経験したことのない大人の世界に強制的に足を踏み入れることになるのです。
この思春期の身体の変化や、心の動きは、大人になってしまうと忘れてしまうもの。
良く大人が「最近の若い者は、・・」ということばを聴くことはないでしょうか。
この言葉は古来より、ずっと言い続けられている言葉で、自分が昔時間を忘れるくらいに熱中したことや、悩み苦しんだ想いも、遠い過去のものになってしまって、その時のことを忘れてしまうのです。
人の記憶は、覚えているようでも、次第に変化していくもの。小学校のアルバムを見ると、この人こんな顔だったっけ、というような出来事はあなたも経験したことがあるのではないでしょうか。
だから、大人になってしまうと忘れていく思春期だからこそ、しっかりとその時の身体の変化や心理的な特徴をしっかりつかむことが、思春期の人に対する臨床心理には大切なのです。
思春期の心理的特徴
思春期の心理的特徴は、身体の変化についていけないことによる驚きと恐怖があります。
大人になりたくないのに勝手に大人になっていく自分の身体は、自分の身体だけれど見ているだけでも嫌だという人もいるでしょう。
しかし、思春期にはその身体の変化の前に心の変化が生じます。
子どもの心のまま、大人の身体になっていくのは大きな危険。
たとえば、学童期の心理、つまり小学生の自己中心的なわがままなこころのまま大人になると、力もあり、物事の順序や良し悪しの判断などがないまま、暴力的に解決することができてしまう。
これでは、社会が崩壊してしまうので、心を大人の心に変えてから身体を変化させるようになっているのです。
つまり思春期の第二次性徴が始まる前には、実は、心の変化が起こり、身体は子供のまま身体が大きく大人に変化していくのです。
この時期のことを心理学では、前思春期と言い、英語ではprepubescent、または、preadolescenceと言います。
この思春期が始まる時期は年齢的には、女子が3年生くらいから、男子は4,5年生くらいに当たるでしょう。
この時期は、精神分析学では、凪の時期としてとらえられており、見た目は、何の変化もないように見えます。
それは、幼児期や児童期の頃のような聞き分けのなさも姿をひそめ、思春期のような激しい情熱の揺れもない手のかからない時期になるから。
ですが、じつは、その凪の時期には、心の中では大きな変化が生じ始めているのです。
その思春期の心理的な変化の特徴とは、それまで当たり前であったことが突然あたりまえでなくなるという心理的な変化。
具体的に言うと、
- 自分の父親や母親は、本当に自分の父親であり母親であるのか
- 本当は自分は貰い子ではないのか
- 夜自分が寝ている間に父親と母親は本当の姿に変わってしまっているのではないか
- 父親と母親は実は妖怪なのではないか
- 夜になるとカーテンの向こう側が別の世界になっているのではないか
- 昼間と夜の世界は別なのではないか
などといったようなこと。これらのことは、とても自明で当たり前に判断してきたことなのですが、思春期になると、このような想いにとらわれるのです。
この思春期の問いかけは、哲学的もあります。
- 自分が生まれる前、自分はどこにいたのだろうか
- 人は死んだらどうなるのだろう
- なぜここに今自分はこうして生きているのだろうか
- 死んだら意識はなくなるというが本当だろうか
- いま生きているつもりでも実は死んでいるのではないか
- 宇宙の果てはどうなっているのだろう
- 夜空の向こうには何があるのだろうか
- いつの日かUFOが来るのではないか
こうやって、UFOや心霊体験に興味を強く持ち始めるのもこの時期です。
思春期の身体の変化
思春期の身体の変化は、第二次性徴のこと。
第二次性徴とは子どもの身体から大人の身体に変わることです。
個人差はありますが、小学校高学年くらいから始まり、中学生の時には、ほとんどの人が第二次性徴を迎えていることになります。
この個人差が曲者で、早すぎても周りから奇異の目で見られるし、遅すぎても周りからバカにされることがあります。
ただでさえ、今までの身体から大きく変化する思春期。
みんなと同時に第二次性徴を迎えることができないということは、心の中に負担が生じることもあることを忘れてはいけません。
(関連記事:エリクソンのライフサイクル理論でのアイデンティティは心理学の基礎知識)
思春期の自我体験
この世界に対して自分自身に対して突然に違和感を持つということは、じつは、自分という存在を強烈に意識できる体験。
つまり、思春期に起こる悩みは自分を確立するための自我体験となるのです。
自分は本当に自分だろうか、どうして私は私なのだろうかという私というものに関する問いかけをするから、その中に私は他でもない私なのだという意識が浮かび上がってきます。
このことをドイツの心理学者シャルロッテ・ビューラーは自我体験と名付けました。
今までは、周囲のとの関係の中に埋もれていた「私」が、そこから離れて自分自身を意識することができたために、「私」が突然生まれ、わたしというものを体験する自我体験がなされる。
この時には、「私」は自分を見つめ自分について考える「私」とそれによって対象化され見つめられる「私」に分離することができるようになります。
この状態を別の言葉でいうと、NLPのアソシエイト状態とディソシエイト状態。
自分を主観的に見つめているのか、客観的に見つめているのかという違いのこと。
このように、私を二重化し、分離することは、私という存在が私にとってはっきりと意識され、それとしっかりと出会うことにもなります。
自我体験は思春期に突然訪れるものですが、それは自分自身がまぎれもなく「個体」であることに気付くことなのです。
思春期に起こる認知的な変化
このような前思春期の体験的世界が変化することは、子供の認知能力の変化と対応しています。
ありそうもないことを考えるのも、目の前にない体験的世界から離れた抽象的なことを思い描くことができる能力の発達がその要因。
子どもの頃は、実は神経衰弱が得意なのを知っていますか?
また、思春期前の子供は、一度聞いたことを細部まで忘れずに覚えていることもあります。
思春期に入る前の子供は、物事を記憶するとき、見たまま写真のように記憶することができる能力があり、視覚情報や音韻情報をそのまま加工せずに感覚的にとどめておく感覚記憶が優位なのです。
ですが、前思春期に入ると過去の自分の経験や知識と意味付けて記憶する意味記憶が優位になって来ます。
この意味記憶で覚えようとする方法は大人の記憶方法。
他にも、前思春期は計算についても変化が見られます。
前思春期に入るまでは、具体的な数と結びついて1+1のように感覚的にとらえることができるもので計算が行われます。
ですが、この時期から少数や分数が教えられ、それを理解することができるのです。
たとえば、1/3は少数で表すと0.333・・・ですが、3/3は0.9999ではなく1になる、ということを理解できるようになるのです。
ほかにも、距離と時間の感覚を掛け合わせた速さの概念もその象徴的な理解と言えるでしょう。
このように抽象的な世界のものを扱えるようになるのが前思春期の認知的な変化。
この変化はピアジェの形式的操作期にあたります。
(関連記事:アルバート・バンデューラの自己効力感を高める4つの方法)
思春期にイライラして反抗期になる意味
前思春期で心理的な変化や認知的な変化が起こると、第二次性徴を経て思春期に入ります。
この第二次性徴が起こると親に対して突然に距離を取り出すようになるというのはよく経験されるところではないでしょうか。
この拒否感は特に異性の親に対して強烈な拒否感を持ったり生理的な嫌悪感を持ったりすることにつながるもの。
これは、近親相姦を避けるための生理的な現象でもあり、親以外の異性との結びつきへと移行するためのもの。
以前の伝統的な社会であれば、この時点で大人の仲間入りを果たしていた時期でもあります。
その証拠に、この時期には、異性に対してそれまで感じたことが無いような感情、つまり、性的なニュアンスを含んだ思慕の情が生まれてくるのですから。
思春期は、感受性が鋭く心理的にとても不安定になる時期。
ちょうど思春期に当たる時期に子供たちの逸脱や非行、粗暴な行動が目立つようになるのです。
見方によると、これらの行動は自分の中に生まれてくる様々な、なじみのない感情を持て余しているようにも見えるのではないでしょうか。
これが、家庭で起こると、いわゆる反抗期になりますが、多くの場合、反抗期になっても外ではあまりその姿を見せることは少ないのではないでしょうか。
思春期に入ると、否応なしに自分を新しい自分に作り替えていかなければいけません。
この思春期に入るということは、半ば強引に訪れる自分に対する変化を受け止めながら新しい自分を作っていくこと。
思春期に対してどのように取り組んでいくのかというのは、その時期に共通の課題であると同時に、個別的な問題でもあります。
なぜなら、自分の変化をどう受け止めるかは、自分をいままでどのくらい受容していたのか、どのくらい他の人の助けを受けることができるのかによって変わってくるから。
思春期には今まで当たり前であったものに対して違和感を感じるようになります。
たとえば、次のような経験をした記憶はないでしょうか。
- 親や兄弟が口を付けたコップで飲み物を飲むことができなくなる。
- 親が入った後のトイレに入ることが嫌
- 自分お手の形がとても奇妙に見える
このような感覚が行き過ぎると、自分の鼻が醜く見えて、削り取りたくなるような衝動に駆られる衆望恐怖を感じることもあります。
また、食べ物が急に気持ち悪くなったり食べると体形が変化するのではないかと摂食障害を起こすこともあります。
さらには、どれだけ時間をかけて何度手を洗ってもまだばい菌がついているように感じたり、道路の白線からはみ出すと悪いことが起こるという迷信的な思い込みにとらわれたりすることもあります。
このように、今までは当たり前であったことが当たり前でなくなるのが思春期の特徴。
思春期の子供たちは、こんな変化に自分でも気づいているので、できていることができなくなって、イライラする、自分の心が思い通りにならないからイライラする。
そしてその感情の暴走を止められない時には、反抗することになるのです。
まとめ
以上、神戸ヒプノセラピー、催眠療法のベレッツアが「思春期の心理的特徴とは。身体の変化とイライラで反抗期になる意味」をお伝えしました。
思春期にどのような体験をするのかによっても大きく影響されることになる。
思春期という時期に起こる身体的・心理的な急激な変化は、次のステップへ立つための準備。
心理的社会的に自分を創りかえて、未来へつなげていく青年期への入り口が思春期なのです。
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