自己同一性とはいったいどのようなものなのでしょうか。また、自己同一性の意味を分かりやすくいうとどうなるのか、あなたは知っていますか?
また、自己同一性と心理学でいわれている自我同一性との違いは何なのでしょうか。
実は、そんな自己同一性、アイデンティティについて知ることができれば、青年期の心の問題、大人になり切れない人の悩みが見えてくるかもしれません。
そんな、自己同一性とは、どのようなものなのか気になりませんか?
自己同一性の意味を分かりやすくいうと
自己同一性とは、エリック・エリクソンの提唱した青年期における発達課題の一つアイデンティティの日本語です。
心理学者のエリック・エリクソンは、心理社会的発達理論において人生を大きく8つの段階に分類しました。
- 乳児期:~1歳
- 幼児期:1~3歳
- 遊戯期:3~6歳
- 学童期:7~11歳
- 青年期:12~20歳
- 前成人期:20~30歳
- 成人期:30~65歳
- 老年期:65歳~
このように、だいたいの年齢において分類されるのですが、現実には、その年齢は後半の区分に行くほど実際の発達と乖離が生まれることがあります。
実際にカウンセリングを行う時には年齢区分に気を取られずに、だいたいこれくらいと押さえているほうが、固定観念に縛られず、良いかもしれません。
さて、問題となる自己同一性とは、この中の青年期に獲得すべき発達課題です。
発達課題とは、人の一生のうち、その時期において学び、理解し、自分のものとして納得して受け入れることができるようになること。
そして、自己同一性とは、青年期における発達課題であり、自己同一性を獲得することで、青年期の次の段階、初期成人期に入っていくことができます。
つまり、青年とは、成人になり切れていない、大人になり切れていない状態ということ。
そんな青年期における発達課題、自己同一性を獲得することとは、自分とは何か、自分は何者なのか、自分はどうあるべきなのか、という自分の役割を知ること。
この自分の役割を知ることができれば、アイデンティティを獲得することになり、自分の生きる道を信じて進むことができるようになるのです。
自分の役割がわかるから、自分が何をすればいいのかわかる。
自分が生きる道を手に入れることができるのです。
自己同一性は悩みぬいて手に入れるもの
昔は、自分の生きる道は、生まれた時から決まっていて、その家のしきたりやルールに沿って生きることを定められていました。
家の名前を守ること、家の職業を守ること、家の宗教を貫くこと、自分の性別をあるがままに受け入れることなど、選択肢はなかったのです。
ですが、現代においては、全てが自由になりました。
職業も好きなものが選べるし、家が嫌になれば、逃げだすことも出できる。性別すら変えてしまうことができる世の中です。
つまり、現代において自己同一性は、簡単に天から降ってくるものではなく、自分で見つけ出すことが必要になったということ。
全てが自由になったがゆえに、選択肢が無限に増えることになって、自分が生きる道がわかりづらくなっているのです。
このため、青年期がエリクソンの言う人生の発達段階で示した年齢区分と一致せず、青年期が伸びていく傾向にあります。
それが、エリクソンが示した心理的モラトリアムです。
(関連記事:モラトリアムとはどんな意味?心理学的観点と経済学的観点の違い)
自己同一性は不変ではない
このように、青年期に獲得した自己同一性でも、一生、そのままというわけにはいきません。
たとえば、自分が生きる道だと信じて働いていた会社も、不況で倒産してしまって無くなってしまうかもしれません。
自分が働いている職場で、濡れ衣を着せられて非難の対象になってしまうかもしれません。
また、自分の家族だと思っていた相手、一生添い遂げるつもりだった相手と離れてしまうこともあるかもしれないのです。
このように外的な要因だけでなく、ある時、ふと我に返ったとき、自分の人生を見つめなおすことが出てくるかもしれない。
人生は、何が起こるかわからない。だから、自己同一性はいつまでも不変ではいられない。
人生をまっすぐ一本の道だけで生きていけるほうが良いのですが、それができるとは限らない。
だから、状況に合わせて、いちど見つけた自己同一性が揺らぐときもあり、その自己同一性を再び見つめなおすことが必要になることもあるのです。
自己同一性と自我同一性との違いはなにか
自己同一性に似た言葉に、自我同一性という言葉があります。
この自我同一性とは、英語では、ego identityと呼ばれており、心理的かつ社会的に同一であるということ、つまり、自分とは何かというアイデンティティのことになります。
よくよく中身を見てみると、自己同一性と自我同一性は、同じことを刺していることがわかるのではないでしょうか。
実は、心理学において、自我同一性は以前に言われていた言葉で、だんだんと、自己同一性という言葉が使われるようになってきています。
つまり、自我同一性とは自己同一性と同じ意味で使われ、単に同一性とだけ呼ばれることもあるということ。
アイデンティティ、自己同一性、自我同一性、エゴアイデンティティ、同一性と、色々な表現方法がありますが、結局は、どれも青年期に獲得すべき発達課題。
自分が何者であるか、自分の人生はどうあるべきなのか、その自分の役割について見つけることが自己同一性の獲得であり、自我同一性の獲得です。
そして、自己同一性を獲得することにより、家庭や会社などの組織に対する所属意識、帰属感が高まり、その組織に対して忠誠心を持つようになります。
その忠誠心が、組織で活躍するうえでのモチベーションになっていく。
自己同一性を獲得することとは、自分の生きる道を知るだけではなく、社会の一員として、つまり大人として生きていくことなのです。
(関連記事:エリクソンのライフサイクル理論でのアイデンティティは心理学の基礎知識)
まとめ
以上、神戸ヒプノセラピー、催眠療法のベレッツアが「自己同一性の意味を分かりやすくいうと?自我同一性との違いはなに?」をお伝えしました。
自己同一性とは、アイデンティティのことであり、自分の生きる道を見つけることで自分の人生の指針を見つけること。
そして、自己同一性は、そればかりではなく、これから生きていく社会の一員としての自覚をもって貢献して生きていくことにつながります。
人間として、人間社会で生きていくのであれば、自己同一性は、無くてはならないもの。
また、ひとたび見つけた自己同一性であっても、それは不変ではなく、変わっていく、変えなければいけなくなる時も来るかもしれません。
自己同一性は、自分の人生のコンパス。自分が感じている自己同一性と社会的な現実が一致していくように調和を取ることで豊かで幸せな人生になっていくのかもしれません。
(関連記事:青年期の発達課題とは)
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