モラトリアムとはどんな意味?
そんな疑問が湧いたことはありませんか?
実はモラトリアムとは、心理学でも使われるし、経済学でも使われる言葉。
そんなモラトリアムとは、どんな意味なのか心理学的観点と経済学的観点の違いを見てみましょう。
経済学的観点のモラトリアムとは

モラトリアムとは遅延という意味のラテン語moraから派生した言葉です。
モラトリアムについて詳しく説明するには、まず、経済用語としてモラトリアムから説明するのが適当でしょう。
経済用語のモラトリアムとは、緊急避難的に借金の返済を猶予するということ。
世界恐慌など、普通の状況ではない経済的な変動が起こった時に、自国の経済活動を保護するために国などが行う借金の返済を猶予することが経済学的なモラトリアム。
そのまま自然の成り行きに任せていると、金融の混乱を招き、自国の金融システムの崩壊を防ぐために、債務の履行の延長、つまり借金の返済の猶予が行われます。
日本では、1923年の関東大震災と1927年の昭和金融恐慌の時に行われました。
社会的モラトリアム

社会的に使われるのモラトリアムには、法律が公布されてから施行されるまでの猶予期間という意味もあります。
法律は、決まったらすぐに実施されるわけではありません。その法律が施行されるまでには、まず交付され、一定期間ののちに施行されるのが普通です。
なぜなら、法律が決まったからと言って、すぐにその通りになるとしたら混乱を招きかねないから。
だから、法律が作られて、決まったとしても、しばらくの間猶予期間が与えられて施工されるというシステムが取られており、その猶予期間をモラトリアムと言います。
たとえば、核実験の一時停止は、a moratorium on the test of nuclear weaponです。
商業捕鯨についてもモラトリアム期間が設定されています。
心理学的観点のモラトリアムとは

さて、本題の心理学的観点のモラトリアムとは、青年期に起こる心の状態にとどまっている期間のことです。
もともと、青年期というものは、古くは存在しませんでした。
動物も、子供からすぐ大人になってしまい、子供と大人の間がないように、人間ももともと、その境である青年期はありません。
これは、戦国時代に結婚年齢が、15歳前後であったことを見ても、元服後、すぐに大人とみなされ、中途半端な青年期がなかったことを示しています。
ですが、現代は、20歳を回っても大学生として、まだ独り立ちせず社会に出ていません。
社会に出るまでに学ぶべきことが増えたという理由もあり、身体は大人になっても精神的には大人でも子供でもない期間、青年期ができたのです。
その青年期、心理学者レヴィンのいう、境界人という意味のマージナルマンを抜け出して次の大人になるには、自分とは何かというアイデンティティを持つことが必要。
このアイデンティティを獲得するというのは、青年期の発達課題として心理学者のエリック・エリクソンが定義しています。
自分は何者で、何をする人なのかというアイデンティティ、つまり、自己同一性を得ることで、社会や集団への帰属心や忠誠心を得られるのです。
このアイデンティティを得ることができるまでの期間、つまり、青年期における青年として大人になるまでの猶予期間が心理学的なモラトリアム。
エリック・エリクソンは自分とは何者かという悩みが生まれてから自分の自我が確立するまでの期間を心理社会的モラトリアムと名付けたのです。
この心理的モラトリアムとは、青年期の葛藤している時期を指しますが、日本の心理学者小此木啓吾さんが唱えたモラトリアム人間という言葉はエリクソンの心理的モラトリアムとは若干の違いがあります。
モラトリアム人間とは

モラトリアム人間とは、医学博士であり、元慶応義塾大学の教授、精神分析家、小此木啓吾さんがその著書1978年に中央公論新社から出版された「モラトリアム人間の時代」で説明されているもの。
モラトリアムという言葉が、心理学で広まっていったのは、この本が大きな役割を果たしたのです。
その中で出てくる、モラトリアム人間とは、大人になるのを先送りし、いつまでも、その青年期にとどまっている人のこと。
つまり、自分が何者であるのかを決めずに、いつまでも子供の状態のままでいる人間のことを刺しています。
このモラトリアム人間でいるとは、子供のままでいると表現するとなんとなく、努力せずにのうのうと暮らしているように聞こえますが、一概にそうだというわけではありません。
そんなモラトリアム人間について、モラトリアム症候群の観点から見てみることにしましょう。
モラトリアム症候群とは

モラトリアム症候群とは、ピーターパン症候群とも呼ばれ、身体は大人になり切っていて、年齢的にもほとんどの人が大人になっているのにもかかわらず、精神的に大人になれていない状態。
つまり、心理的モラトリアムの期間を自分で延長している人のことで、精神医学ではアイデンティティ拡散症候群と呼びます。
この状態は、アパシーと呼ばれる状態で、何にもする気が起きない無気力状態にもなります。
大人になるためのアイデンティティが獲得できていないので、自分が何者で、何をするべきかわからず、どこに所属するべきか、どこに忠誠を誓って生きるべきかがわからないのです。
これは、古く、家のしがらみや世襲制の仕事などで縛られていたら、考えるまでもなく自分の行き方が決められていました。
家から出されて丁稚奉公していたとしても、それが生きる道であり、他に選びようがなかったのです。
ですが、今は職業にしても、所属団体にしても、宗教にしても、性別まで、自由であり、生き方そのものの選択肢は無限大にあり、自由を与えられています。
この自由な中から、選択肢が多すぎて選ぶことができずに生きているのがモラトリアム症候群。
これが高じてくると、自分の子供の面倒すら見られないような親にもなるし、家に引きこもり自分の生活費すら人に頼るニートになってしまう。
このモラトリアム症候群から抜け出すためには、自分の子供を谷に突き落とす獅子のような厳しさも必要なのかもしれません。
(関連記事:青年期の発達課題とは)
まとめ

以上、神戸ヒプノセラピー、催眠療法のベレッツアが「モラトリアムとはどんな意味?心理学的観点と経済学的観点の違い」をお伝えしました。
モラトリアムとは、支払い猶予。自分の責任を果たすまでの時間を延ばしてもらっている状態です。
だから、いつかはその責任を果たすべき時期が来ます。
その時逃げ出さずに、正面から自分自身に立ち向かうことで、モラトリアムの状態を脱却し、新たなステージに立つことができるのではないでしょうか。
(関連記事:生きている意味が分からない。なぜ、仕事をして生きる必要があるのか)
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