メラニー・クラインの心のポジション。対象関係論による精神分析

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メラニー・クラインとは、ジークムント・フロイトの娘であるアンナ・フロイトとともに精神分析を研究した心理学者の一人。

メラニー・クラインはアンナ・フロイトと幼児に関する精神分析を中心に、精神病性疾患に取り組みました。

 

そのメラニー・クラインが子どもの心の発達におけるポイントと指摘したものが心のポジション、心の態勢。

対象関係論による精神分析を展開したメラニー・クラインがたどり着いた心のポジションとはいったいどのようなものなのでしょうか。

 

メラニー・クラインとは

メラニー・クラインとは、精神分析を研究した人で、オーストリアのウイーン出身。

1882年3月30日に生まれ、1960年9月22日に78歳でイギリスにおいて没しています。

 

児童の精神分析を中心に人の心について心理臨床的なアプローチを続けていました。

子どもの心の発達について研究していたアンナ・フロイトと論争しながらもともに歩んだ道のりは、当然のことと言えるのかもしれません。

 

父親がユダヤ系の医者で母親はユダヤ系のラビ(僧侶)の家系。

精神的な問題の原因を探るための対象関係論をもとに、アンナ・フロイトの父親ジークムント・フロイトの死の欲動概念から独自の概念を発展させ、フロイトの後の精神分析に大きな影響を持つクライン学派を創り出すのです。

 

メラニー・クラインの子どもの心の発達理論、心のポジション(態勢)

メラニー・クラインは、フロイトの理論を基調に、1920年代から乳児の情緒の発達を詳しく研究します。そして、独創的な理論を生み出していくのです。

人生の最も早い時期の心の在り方に注目した心の発達理論を展開し、対象関係論という考え方を創り出しました。

 

メラニー・クレインがここで、発達の推移を段階とか時期といった発達心理学者に多く見られる言葉ではなく、ポジション、態勢と名付けたのは、次のような考え方もとになっています。

その考えとは、乳児期の早い時期に体験する特有の不安や情動とそれにまつわる対象との関係と防衛機制の在り方は、その発達段階だけに固有のものではありません。

 

人間の人生の全ての時期において、つまり、成人の心の中にも続いていくものであり、乳児期に体験した対象との関係は大人になっても持ち続けられているのです。

そこで、心について理解するためにポジションという概念が用いられたのです。

 

子どもであっても大人であってもその時その時においてそのポジションのどちらの状態にあるのか、あるいは、ある局面ではどちらが優勢であるのかを理解しながらその状態をとらえていこうというものがポジションという概念なのです。

そんなメラニー・クラインの二つの心のポジションは妄想―分裂ポジションと、抑うつポジションです。少し説明していきましょう。

 

妄想―分裂ポジション

人が生まれ落ちた直後から4~6カ月頃の乳児の授乳体験を中心とした内的な世界観を妄想―分裂ポジションと言います。

この心のポジション、妄想―分裂ポジションにおいては、自己も対象も部分的で断片的な存在

 

たとえば、おっぱいを吸っている自分の口、手、足はバラバラに感じられており、快感を感じる自己と不快を感じる自己も別々の存在として体験されています。

対象についても同様に、乳房や乳首など視覚や触覚などを通して母親を部分的にしか認識できていません。

 

このような断片的で部分的にしか認知できない関係が部分対象関係。

この部分対象関係の世界では、満足を与える乳房は幻想の中で「良い対象」となり、逆に飢えや欲求不満をもたらす乳房は「悪い対象」となるのです。

 

その二つの対象を同じひとりの人間の中に認めることは困難な作業であり、分裂したままとなるということ。

そして、悪い対象に対する激しい怒りは、投影性同一化と呼ばれる防衛機制によって自己に向けられて迫害的な不安がこころに充満するのです。

 

抑うつポジション

抑うつポジションは生後4,5か月ごろから乳児が体験し始める内的な世界。

良い自己への安心感と信頼感が高まるのと同時に、神経などの生理機能が発達していく中でバラバラだった自己や対象がそれぞれ統合してく過程です。

 

飢えや苦痛を与える悪い対象とその悪い対象を憎み、破壊、攻撃する自己。そして満足を与える良い対象とそのよい対象に愛情を向ける良い自己という断片的な部分対象関係に変化が生じてきます。

苦痛を与える乳房と愛情をくれる乳房が同じ一つのまとまった全体対象としての乳房を持つ母親であることに気付くのです。

 

こうやって愛情と憎しみの葛藤、アンビバレンスな感情を体験するのがこの時期の子ども。

そんな子どもはこの経験によりさらに心が発達していきます。

 

妄想-分裂ポジションと抑うつポジション

こんな経験をすると、悪い対象として攻撃していたけれどそれは良い対象でもあってそのよい対象を傷つけたり死なせてしまったのではないか等喪失感や絶望感、抑うつ感などの感情、そしてそれに伴う罪悪感や悔いという新しい感情が生まれてきます。

さらに失ってしまったと感じられている良い対象に思いこがれる感情も生まれます。こうしたこれらの感情が抑うつ不安。

 

乳児にとってその不安への対象が切実な課題になります。この苦痛な情緒体験に耐えて乗り越えていくことが自己や対象の統合をもたらすことになるということ。

これに伴って、妄想―分裂ポジションの時に支配的になっていた対象の断片化とそれに伴う過剰な投影性同一化は影を潜め表面上消えてしまったかのよう見えます

 

ですが、その情緒的な苦痛に耐えられない時には、再び、妄想―分裂ポジションへと舞い戻り、対象や自己を分裂させて不安から逃れようとするのです。

また、もしかすると、躁的防衛と言われる心の防衛機制を働かせて万能的な世界に入ってしまい、自分の都合の良いように対象をコントロールし続け、対象の破壊を認めずよい対象を理想化し続けるかもしれません。

 

このようなこころの防衛を原始的防衛と言いますが、このような心の働きは情緒体験する機会を失い、内的なこころの成熟を妨げてしまうのです。

ここで抑うつ不安を抱えられるようになるなら、乳児は自分が対象を傷つけたことを受け入れて、それを修復しようと試みます。

 

だからこの経験から、償いの感情が生まれるのです。さらに傷つけても愛情を向け続けてくれる対象への感謝の気持ち、そして対象を傷つけないように配慮する思いやりの感情が生まれるということ。

こうした自己と対象の統合は、自己愛的な対象関係が解消されていく心の成長の過程

 

また、こうして子どもの心が成熟していく過程は具体的な思考から抽象的で象徴的な思考へ発展していくプロセスだということ。

抑うつ不安は、内的な世界を象徴的にとらえる心の働きであり、豊かな言語表現に支えられて受け入れられていくのです。

 

なお、抑うつポジションは離乳を中心とした乳児期の発達において体験されること。

ですが、この抑うつ不安のテーマは、生涯かけて乗り越えるべきテーマとも言えます。

 

メラニー・クラインは1940年代に現代では統合失調症と呼ばれる精神分裂症の病理的な固着点として、妄想―分裂ポジションの概念を提唱しています。

 

抑うつポジションをめぐる病理としてのうつ病や躁病、境界性パーソナリティディスオーダーなどのパーソナリティ障害、人格障害から神経症まで幅広く対応している治癒理論がメラニー・クラインの心のポジションといえるでしょう。

 

メラニー・クラインの精神分析の基本、対象関係論

メラニー・クラインの提唱した対象関係論は、子どもとの遊戯療法、プレイセラピーで直接子供と接することで見つけ出されました

ジークムント・フロイトが成人した患者の臨床例から導き出した理論とはこの点において徹底的に違っています。

 

対象関係論とは、一般的な人間関係を現すのではなく、母親との関係であり、幼児期におけるとても大きな存在である対象です。

乳児における対象は目の前の母親がすべてであり、重要視されていくのが母親との内的で心的な関係であることは間違いないでしょう。

 

だから、対象関係論ではその心の中に対象のイメージと自我や自己のの関係を研究することが中心となっています。

現実生活においておきる精神的な異常や行動の異常性は、この対象イメージのゆがみや悪化、または、執着の結果、生じていると考えます。

 

メラニー・クラインの子どもの心の中に根付いている内的対象関係を重視する考え方は、無意識や内的対象に目を向けること。

この点において、無意識を重視するメラニー・クラインの対象関係論はアンナ・フロイトの自我心理学やサリバンの対人関係論とは違うものと言えるでしょう。

(関連記事:ヒプノセラピーで使われれる潜在意識とは

 

まとめ

以上、「メラニー・クラインの心のポジション。対象関係論による精神分析」について、神戸ヒプノセラピー、催眠療法ベレッツアがお伝えしました。

メラニー・クラインは幼児に対する精神分析のエキスパートであり、子どもの心の発達に関する理論に大きな貢献を果たしています。

 

ヒプノセラピーでは、クライアントの無意識の中を見ていくときに、この子どもの頃の固着点にたどり着くことが少なからずあります。

そんな時に、メラニー・クラインの心のポジションを知っているのか知らないのかで、今乗り越えるべき課題がどこにあるのかを理解することができるようになるのではないでしょうか。

(関連記事:精神分析学のジークムント・フロイト。精神分析・夢判断と催眠療法

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