精神分析とは、ジークムント・フロイトが見つけ出した臨床的な心理療法です。
その精神分析では、子どもの心の発達過程においての問題が成人した後にも問題となることがあるといいます。
そんな精神分析での心の理論とはどんなものなのでしょうか。
フロイト提唱した子どもの心発達理論、精神-性的発達論を見ていくことにしましょう。
精神分析とは
精神分析とは、精神科医であり心理学者でもあるジークムント・フロイトが夢分析をもとにして作り上げたもの。
その起源を催眠療法、ヒプノセラピーとしながらも、心の問題を科学的に分析する手法にこだわり、精神分析というものを作ったのです。
だから、ヒプノセラピーと同じく、アプローチ方法は違えど、無意識から生まれる欲望や願望、コンプレックスなどをひも解いて、気付きを得ていくという心の問題の解決方法であることは根源的に同じです。
フロイトの精神分析はいつも同じ場所、同じ時間、同じ相手とセッションを行うというもの。
患者であるクライアントはカウチと呼ばれるベッドのような寝椅子に座り、セラピストであるフロイトが頭の近くに座るというもの。
こうして、クライアントは思いついたことを次々とセラピストに語っていくのです。どんなに常識はずれなことであってもどんなに不道徳なことであっても意識化されたものをすべて話します。
このように意識に上ってきたものはすべてセラピストに語っていくというのですが、現実に戻った時、決してその時に思いついたことを実行してはいけません。
たとえば、法律上許されない殺意や人から奪うことはもちろん、これくらいいだろうということも決して実行せず、この無意識の中に眠っている欲望や願望を表面化させることだけに集中するのです。
そうすることによって、クライアントの心の中で押さえつけられ抑制されていたものが徐々に解放されていきながら昇華されていき、心の問題だったのものが悩みとは別次元のものとなるというのが精神分析。
この一連の流れが精神分析であり、1回のセッションで問題が昇華されることは少なく長い年月をかけてセラピーを行っていくのが通常です。
この心の問題の原因になっているものは、トラウマであったり、思い込みであったり、視野が狭くなっていることで生まれる誤解であったりします。
そんな心の問題の問題は幼少期である子どものうちに出来ることが多く、子どもの心の発達について多くの理論が提唱されています。
子どもの心の発達理論
人の心は身体の成長に密接に結びつきながら作り上げられていきます。これを心理学では、身体の発達と同様に心の発達と言います。
その心と身体の発達過程においてそれぞれの時期に特有の発達課題があるとされます。幼児は幼児なりの、児童は児童なりの、青年には青年なりの乗り越えなければならない壁があるということ。
発達していく過程において、その時期に特有の目覚ましく発達する心身のテーマがあるのです。
また、身体的な成長が終わる成人になってからも心は発達していくとする、一生を視野に入れたライフサイクル論とというものもあります。
発達のある段階で、何らかの理由で精神的な成長が滞ったり、つまづいたりした時に、もういちど健全な発達の道筋に戻れるのか、それともそこから逸脱してしまうのかでその後の人生は大きく変わってしまう。
心が発達していくなかでその時の危機、乗り越えるべき課題を上手く乗り越えることができない場合、神経症的な症状を引き起こす可能性を秘めています。
もっとひどい場合は、深刻な精神症状や精神病理に発展することもありえるということ。
その時期特有のテーマをどのように生き抜いていくのかをめぐって精神分析では様々な発達観に基づいたいろいろな理論があります。
そんな中から臨床的な実践に基づいて理論化された代表的な心の発達理論の中からフロイトの精神―性的発達論を見ていきましょう。
フロイトの精神-性的発達論
フロイトは、乳幼児が成長するにつれ、身体の特定の部位の感覚が敏感になることに注目しました。
そうして、フロイトが見つけ重視したところは、乳幼児に性的な衝動の発達の推移を重視したこと。性的な衝動のことをフロイトは、リピドーとしました。
このリピドーの発達がその後の精神生活を支配する無意識的な動的な原因となるという精神―性的発達論という理論をフロイトは1900年に展開します。
リピドーの根源的な原因を創り出す体の部分は、口、肛門、性器。これらの部位への関心やその満足には一定の発達の順序があるとします。
人の成長の時期における発達段階に対応する快感部位、その快感を得ようとする充足の目標、充足の対象があって、これらがセットになって一緒に成熟していきます。
その観点から、フロイトは、乳幼児のリピドー、性的快感をめぐる発達の流れに沿って発達していく人格の形成過程には、次のようなものがあるとしました。
口唇期
乳児は栄養を摂取するために生まれたすぐ、誰にも教えてもらっていないにもかかわらず、おっぱいを吸うことをしっています。
その時の口とその周辺をめぐる感覚が中心となるのが口唇期。
欲求を充足するときに起こる一体感の中で得られる快の感覚は生命を維持すること、つまり自己保存の本能と結びついて発達します。
反対に空腹やのどの渇きは不快や苦痛な感覚として体験されることになります。
吸うことによって体験した快感は自分の身体を愛することにつながっていく。このことをフロイトは自体愛と呼びました。
吸うことによって得られる満腹感と安心感、そして満足感から生まれる自体愛ですが、乳児は次第にミルクをくれる養育者への愛着を強めていくことになります。そして、自体愛からだんだんと養育者という自分の外の対象へと心地よいことを得るための関心の方向が変化していく。これを精神分析では対象愛とし、自体愛と対をなす概念としています。
肛門期
赤ちゃんが一歳半ごろになると肛門とその周辺の感覚が発達してくるため、排泄に伴う快感を体験し始めます。
さらに肛門括約筋が発達し、排泄時に自分がコントロールすることもできるようになるので、大便をすることで親を喜ばせたり、反対に大便をしないことで親に反抗したりすることができるようになります。
排泄をめぐって依存対象と喜びを分かち合う経験をする機会になり、かけひきすることを覚えることにもつながるということ。
このころに、「ウンチをした/していない」というような「うそ」をつくこともできるようになります。
男根期/エディプス期
三歳から五歳くらいの時期は、偶然得た刺激によって子供は性器の快感に気づき、関心を持つようになることが多い時期。
このことから、子どもは性別を認識できるようになり、男根期とかエディプス期とか呼ばれる時期に入ります。
この時期は、性に対する好奇心が高まりますが、その好奇心やマスターベーションを親が禁止するので、性をめぐる罪悪感につながっていくということ。
この時期の子どもにはエディプス的なテーマが現れてくるようになります。
つまり、異性の親への性愛的願望と同性の親への競争心が生まれて、そしてそれらの気持ちへの罪悪感か処罰不安が強くなっていくということ。
この男根期/エディプス期までの子どもの欲動を幼児性欲と言います。
潜伏期
学童期に入ると、幼児性欲の発達はいったん収まります。この時期が潜伏期。
この時期までは両親に関心が向いていますが、だんだんとその関心が仲間に移っていき、指導者への同一化や理想化が生まれます。
性器期
身体的に成熟し思春期を経て成人になると、口唇期・肛門期・男根期/エディプス期の衝動が異性間の性器的結合によって統合されていきます。
この時期を性器期と呼び、精神的な愛情と身体的な性器的な結びつきが達成される段階に入っていくのです。
発達が阻害された固着点
子どもの発達段階において、体質的な要因や外傷的なできごとによってリピドーの発達が阻害された場合、その時期を固着点と呼びます。
そして、フロイトはどの段階でリピドーの固着が起こったのかというその固着点がのちの性格発達に重大な影響を与えるとしました。
人生でなんらかの挫折が起こった時とか、心理療法を行っている中においてセラピストとの間で乳幼児期の心性が活性化されてきた時とかに、かつてうまく乗り越えることのできなかった固着点のテーマに精神状態が戻ってしまうことがあります。
この精神状態が子どもの時に心が十分に発達できなかった時の状態、固着点の時点に精神的に戻っていくことが精神分析における退行。
このように、フロイトの精神―性的発達論は、発達・固着・退行モデルを実際の治療論と結びつけて体系化されたのです。
まとめ
以上、「精神分析での子どもの心の発達理論とは~フロイトの精神-性的発達論」を神戸ヒプノセラピー、催眠療法ベレッツアがお伝えしました。
フロイトが発見した子どもの心が発達するときに生まれる性的な衝動、リピドーにまつわることは子供の心に影響を与えるだけではなく、成人した後の精神活動にも大きく影響が現れる原因。そして、このフロイトの精神―性的発達論は、フロイトの娘、アンナ・フロイトに受け継がれさらに整理され確立されていくことになります。
ヒプノセラピーにおいても、なぜかわからないけれど怖くなったり、恐ろしく感じたり、あるいは、衝動的に行動したり、快いことに溺れたりする原因を無意識の中に探ると、過去の固着点、つまり子供のころの体験にたどり着くことが多いのはこのためでしょう。
身体が成人になって表れている心的な理由による精神状態の崩れ、ゆがみ、困難さは5歳ころのまでの体験が原因になるといわれているのは、この発達しきれなかった固着点が原因だといえるのではないでしょうか。
(関連記事:エディプスコンプレックスとは!心理学者フロイトが語ったこと)
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