こんにちは。
神戸ヒプノセラピー、催眠療法のベレッツアの「催眠心理学」。
心の発達状況を調べるのに使われる「サリーとアンの課題」。
サリーがおもちゃ箱の中に片づけたはずのぬいぐるみは一体どこでしょうという簡単な課題で心の発達の程度がわかる面白い心理学の実験です。
それでは、相手の心を理解できるかどうかという、心の理論がわかる「サリーとアンの課題」を見ていきましょう。
サリーとアンの課題
サリーとアンの課題とは心の理論が成立しているかどうかを調べることができる心理学のテスト。
それでは、実際に「サリーとアンの課題」を試してみましょう。
- サリーがぬいぐるみを持っています。
- サリーはおもちゃ箱の中に持っているぬいぐるみを片付けてフタをしました。
- そのまま、サリーは部屋を出ていきます。
- アンが部屋に入ってきて、サリーが片付けたぬいぐるみを引っ張り出してひとしきり遊んだ後、バスケットの中に片づけてフタをします。
- サリーが部屋の中に入ってきてぬいぐるみを取り出そうとしています。
(問題)さて、サリーはおもちゃ箱とバスケットの中、どちらを開けるでしょうか。
と、このようなサリーとアンが出てくる課題。
この課題は、自閉症を研究していたイギリスの発達心理学者バロン・コーエンという人が作り出した問題です。
実際には、子供にこの課題をしてもらうためには、実験を受ける人に映像や画像、劇などをみてもらうことになります。
大人から見るととても簡単な問題。ですが、5歳くらいまでの子供は、「サリーはバスケットを開ける」と間違って答えてしまうのです。
この課題は、相手の心のうちを読み取り、次に行動する予測を立てることにつながるので、心の理論と呼ばれます。
それでは、この心の理論についてみていきましょう。
心の理論とは
心の理論とは、相手の感情や心情、心の状態、考えていることを理解できるという能力。
普通に成長している人達(定型発達といいます)は、相手の考えていることを想像できますから、サリーとアンの課題を出されてもちゃんと正解できる。
ですが、心が定型的に発達していない子供などは、相手の気持ちを理解することができないと言われてきました。
標準的な誤信念課題と呼ばれるこのアンとサリーの課題は最近まで、幼児には答えられない課題とされてきたのですが、実際はそうではないのです。
(関連記事:心理学の基本「心の理論」とは!アンとサリーの課題が明かす秘密)
サリーのぬいぐるみはどこへ?
サリーのぬいぐるみは、サリーの見えないところでアンがおもちゃ箱からバスケットに移動させています。
しかし、サリーはその移動する様子を見ていないのだから、元に入れたおもちゃ箱にあり、ぬいぐるみを探す時は、おもちゃ箱を開けるだろうと思っていると考えるのが心の理論がある人。
ですが、子供の場合、心の理論が完成していないから、自分が移動させたところを見てしまっているので、ぬいぐるみがバスケットの方を開けると答えてしまう。
ぬいぐるみがバスケットに入っていることを知らないはずのサリーが、実際にぬいぐるみが入っているバスケットをサリーも開けると言ってしまう、という風に定義されていました。
ですが5歳くらいの子供には心の理論がないということに対して、近年、反論が出てくるようになったのです。その反論を見るために、ここで、状況を少し変えて子供に提示してみます。
アンがぬいぐるみをおもちゃ箱からバスケットへと移動させる様子をサリーも見ていた状況にするのです。
つまり、サリーと実際に応える子供の二人ともに、アンがぬいぐるみをバスケットに入れたところを目撃しているという状況。
そうすると、子供の答えは、サリーはバスケットの方を開けると答えます。
ここでちょっと、おかしいと思いませんか?もし、心の理論が出来上がっていないなら、答えは、50%の確率となるはず。
ですが、ほとんどの幼児はバスケットの方を指さして、サリーはバスケットを開けるだろう、と答えるのです。
これは、4~5歳の幼児でも、相手の心を読むという心の理論が出来上がっている証拠。
つまり、今までの心の理論は児童にならないと出来上がらないということをくつがえしてしまう結果になっているのです。
それでは、いつごろから心の理論が発達しているのか。
その答えは、実は、生まれて1年半の子供でも心の理論は生まれていると考えられています。
(関連記事:心の理論が働かない人は「サリーとアンの課題」を解くことができない)
では、詳しく見ていきましょう。
実は乳児でも心の理論がある
実は1歳半の子供でも、相手の考えていることを察することができます。
それは、この1歳半という年齢の乳児でも、心の理論が立派に作り上げられているということ。
その証拠が、こちらの動画。
童画の中でも紹介されていますが、1歳半の乳児でも、知らないはずの行動をとることに違和感を覚えていることは注目に値します。
心の理論が成立していないなら、この誤信念課題に対して、びっくりするはずはないのですから。
サリーとアンの課題に答える心の理論は実行機能が必要
サリーとアンの課題に答えることに必要な心の理論。
確かにサリーとアンの課題は相手の考えていることを類推できる心の働きがなければ、正解することができない課題です。
ですが、1歳半の乳児でも見ていないことを知っていることに対しては違和感を持つので、心の理論はこの時点で獲得できている。
それでは、どこが違うのかというと頃に焦点を当ててみましょう。
この1歳半の乳児に対する課題に対する回答は言葉にする必要はありませんが、サリーとアンの課題は言葉にして回答することが必要。
つまり、心で考えていることを実際に言葉にする、行動するというところで違いが生まれていると言えるでしょう。
さて、言葉にして回答するということを行うには、より高次の知能が必要となります。
つまり、ある感情や意思を持っていても、それを言葉にすることや実行するということは違うということ。
よく、
とか、
などということを聞きますよね。
これが、考えている事と、実際行動できるかどうかの間には違いがあり、この違いの中で行われる心の処理のことを実行機能と呼びます。
その実行機能とは、「抑制」、「シフティング」、「更新」という一連の流れ。
サリーとアンの課題に代表される誤信念課題に答えるというような考えている事と違うことをしなければいけないときに働く機能が、この「実行機能」です。
まず、「バスケットの中にぬいぐるみがある」という自分の知っていることと、サリーは「ぬいぐるみはおもちゃ箱の中にある」と、答えが食い違っているというところで、心の中に食い違いが生まれていますよね。
その食い違いを乗り越えるためには、自分の考えを「抑制」することが必要。
そして、心の中で新しい「サリーは知らない」という気持ちに切り替える「シフティング」を行います。
最後に、自分が思っている事と違うサリーが考えているであろう事象「おもちゃ箱の中にぬいぐるみがあると思っているからおもちゃ箱を開けるはず」ということに塗り替える「更新」が行われます。
この時、「抑制」機能を発動させるときには、解答者の心の中に多大なストレス・葛藤が生まれます。
それを我慢しきれない4,5歳の幼児は、耐えきれずに、「サリーはバスケットを開ける」と答えてしまうのです。
つまり、4,5歳の幼児は心の機能が発達していないのではなくて、実行機能がまだ不完全であるということになります。
これは、この年頃の幼児がとてもわがままで、自分の好き放題しがちなことからも見て取れること。
自分を抑制するというストレス耐性が必要だということですね。
(関連記事:心が身体をコントロールする「実行機能」の真実)
まとめ
以上、「サリーとアンの課題でわかる心の理論。サリーのぬいぐるみはどこへ?」ということで心の理論についてお話してきました。
心の理論は、相手の気持ちを理解することであり、表現する実行機能とはまた別の次元の心の働き。
今回紹介したサリーとアンの課題に代表される心の理論は小さい子供にはないと言えるのですが、実は、自閉症の人も、心の理論が上手く働かないと言われています。
そんな自閉症の人たちは、相手の心を推測するという心の理論が無いがゆえに、客観的に物事をとらえる能力が卓越している人が多い。
本当のところは、心の理論が、客観的に物事を見ることの邪魔をしているのかもしれないのです。
そんな、客観的にとらえることができる自閉症の人って、実は定型発達をしている普通の人々よりも優れているかもしれません。
(関連記事:自閉症の真実とは)
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