フロイトの精神分析における自由連想法とは、精神分析の第一基本規則。精神分析で営まれる最も基本的な方法は、その自由に連想することでセッションを行う自由連想法。
そんな自由連想法とは、カウチに座ったクライアントに自由に想像させることで無意識の世界を表の世界に引き上げる作業です。
この方法は、催眠療法と呼ばれるヒプノセラピーと似ていると思いませんか?
精神分析の自由連想法には催眠誘導こそありませんが、自由連想によってクライアントみずから無意識の世界を繰り広げるフロイトの自由連想法は、催眠療法の無意識に対するアプローチと全く同じなのです。
フロイトの精神分析における自由連想法とは
このフロイトの精神分析における自由連想法という方法は、フロイトが精神分析を創り出して以来、現在もそのまま受け継がれている精神分析の本質そのものです。
この自由連想法は、もともと前額法というテクニックをさらに研ぎ澄ませたもの。
フロイトは初期の頃、患者の額に手を強く押し当てて、忘れられている記憶を思い出させるやり方を試みていました。
忘れ去られた記憶を半ば強制的ともいえる方法で思い出させるような技法です。
そうして、その時に「こうしてずっと抑えている間に思い出が辛勝となって目の前に見えたりふと頭に浮かんだりするはずです。思い浮かんだものをたとえそれがどんなことであっても必ず話してください。」と伝えておくのです。
しかしながら、フロイトの患者であるクライアントによってはこのやり方がうまくいかず、この前額法ではかえって自由に思い浮かんだことを話せなくなるとフロイトに訴えかけました。
この素直なクライアントの反応にフロイトは着眼点を得て、自由連想法を生み出すことができました。
自由連想法は、心の中に浮かぶことをそのまま語ることをクライアントに要求します。
クライアントは、心に浮かんだことは、たとえどんなにおかしな内容であったとしても、また、どんなに不可思議な感情や突飛な願望であったとしても、そして、どんなにたわいのない小さな空想だったとしても分析者であるセラピストに伝えるのです。
それが、たとえセラピストに対してどんなにひどいことや失礼なことであってもとにかく率直に語ることが自由連想法。
つまり、自由連想法とは、クライアントがこころ中の真実を語ることが究極的に求められ、心に真摯に向かい合うクライアントの誠実さが問われることになる。
この自由連想法については、ジークムント・フロイトという精神科医、心理学者として大切にしていた信条、人の心を科学的に解明することと深くかかわっていることです。
フロイトの信条と精神分析学の実際の自由連想法
ジークムント・フロイトという精神科医は、科学的精神を大切にしており、クライアントの心の探索にもその考え方を取り入れています。
クライアントを治癒に導くためには、精神分析が真実の上によって成り立つものと考えており、精神分析的状況の中では、クライアントだけでなくセラピストも一緒にクライアントの心の真実に近づくために一種の同盟を組んだ作業を行うのです。
実際のフロイトが編み出した自由連想法はどのように行われたのかというと、カウチと呼ばれる寝椅子にクライアントである被分析者が座り、そのクライアントの頭の横のやや後ろ側に分析家であるセラピストが座ってクライアントの語ることに耳を傾ける、というようにして行います。
そして、基本的には、毎日決まった時間、決まった場所、決まったセラピストと分析を行い、少なくとも週に4回か5回、1回あたり50分行うのがフロイトが編み出した自由連想法。
寝椅子というとリクライニングのある程度の椅子を思い浮かべる人が多いかもしれませんが、カウチと呼ばれる寝椅子はほぼベッドです。
クライアントの中には眠ってしまう人もいたようですが、無意識の精神世界に入ってしまうと、現実と非現実、こちら側の世界とあちら側の世界、覚醒した世界と夢の世界との境界が薄れていくので、そんなことも起こってもふしぎではないでしょう。
精神分析における二つ目の基本規則がクライアントを回復に導く
ここでもう一つ大切なこと、禁欲原則と呼ばれる精神分析の第二基本規則があります。
フロイトは、精神分析療法において、可能な限り禁欲を持って行われることを求めます。それは、クライアントだけでなく、セラピスト側にも同じように禁欲を求めるのです。
クライアントが心に想っていることをすべて、自由に話していく過程において、その過程でどんな願望が浮かんできたとしてもそれを行動に移してはいけないということが精神分析の第二基本規則。
精神分析では、満たすことのできない願望や欲望を満たすことを「行動化」、「Actinig Out」と言いますが、セラピストとクライアントの間での行動化は精神分析において禁忌事項。さらに、クライアントとセラピストの二人の間の関係だけでなく、精神分析に関連しない人との間で行動化することも禁じられます。
この第二基本原則の禁欲原則は、第一基本原則のすべてを話すことと対になっている存在。
このような設定の下で行われる心理療法のセッションでは、自分の自由連想に耳を傾けてくれるセラピストに対してクライアントは特別の感情を持ちはじめます。
たとえば、かつて好きだった人に対する慕情や、理不尽な親に対する怒り、命よりも大切だったペットに対する思い入れなど、重要な依存対象との間で体験した感情に近いものがセラピストに対して生まれるということ。
そうした時に、大人として社会生活を営んでいる普段の精神状態は崩れ去り、幼いころの精神状態に戻って子ども返りするという「退行」という状態が生まれるのです。
その退行した状態では、セラピストに対して甘えたい気持ち、愛されたい気持ちなど、何かを満たしてほしいという欲望が高まり、目の前のセラピストにその欲望を満たして欲しいと求めてくることがあります。
ですが、この時にクライアントもセラピストもお互いに禁欲規則を守らなければならないのです。
つまり、そのような気持ちになっていることを自由に語ってもらうけれど、実際に行動という形で甘えや愛情を満たしてはいけないということ。
被分析者であるクライアントはそれを口に出して言葉化したとしても行動には移してはいけないし、分析者であるセラピストもどれだけ求められたとしてもそれを受け入れて行動化させてはいけない。これが、クライアントとセラピストの両者が守るべき第二基本規則としての、禁欲規則。
精神分析的な治療構造の中では、自由連想をするうちに退行していくので、さまざまな願望が解放されていきます。
ですが、それらを直接満たすことができないという状況がある。このジレンマともいえるはざまにクライアントは存在することになるのです。
そこでは、セラピストへの不満や怒り、あるいは不安感や孤独感などが生まれてくるでしょう。
クライアントが自分の無意識の中に眠るそうした感情を実感し、クライアント自身の中に収めていく方法、内的に受け入れていく過程が精神分析的治療なのです。
フロイトの自由連想法は催眠療法が基本にある
このように自由連想法、精神分析を見ていくとクライアントの無意識の中から問題となる感情や記憶を引き出し、それを実際に見据えていく作業を行っていることがわかるのではないでしょうか。
この自由連想法という心理的な回復を試みる方法は、催眠を使って行われる催眠療法、ヒプノセラピーと同じ技法であることに気付かれた方も少なくはないでしょう。
ヒプノセラピーは、催眠誘導によって、無意識を具現化し、そのイメージ化された無意識の中に眠る願望や欲望、ネガティブなものを自分で見つめなおし、その意味付け、とらえ方を変えて自分の中に収めていく手法。
自由連想法は、横になってクライアントみずから話すことで無意識の世界に飛び込んでいき、その無意識が浮かび上がった時にその無意識の中に眠る自分の感情に気付いて、クライアントの心の中に収めていく手法。
この両者が似ているのは偶然ではありません。
なぜなら、ジークムント・フロイトは、リエボー・ベルネームが作った催眠療法の学校ナンシースクールで学んでおり、シャルコーの下でも催眠療法を学んでいるのだから。
無意識へのアプローチ方法は違えど、その中身は同じもの。
精神分析学もヒプノセラピーもクライアントが無意識の中の抑圧された感情に気付き、それに納得して自分の心の中に収めていくことを求めているのです。
(関連記事:ジークムント・フロイトの精神分析学の基礎となる無意識の発見とは)
まとめ
以上、「フロイトの精神分析における自由連想法とは、催眠療法が基本にある」を神戸ヒプノセラピー、催眠療法ベレッツアがお伝えしました。
フロイトの行った精神分析は週4~5回寝椅子を使って行います。現在でもこの方法を完全に再現している精神分析家もいるが実際のところ、国際的な資格を持って行っている精神科医や臨床心理士はそれほど多くありません。
よくあるのは、精神分析学を少しアレンジして、週に1回50分という時間的な構造を作り、寝椅子を使わずに180度の対面式若しくは90度の横に座る形で精神分析的な理解に基づいて行う心理療法が多いといえるでしょう。
フロイトの行った自由連想法を純粋な精神分析とするなら、一般に行われている心理面接は精神分析的な観点に基づいて自由連想を用いた週一回の対面法であり、精神分析的心理療法なのです。
そして、自由連想法による精神分析は、催眠療法、ヒプノセラピーによる心理療法と同じ過程をたどります。
無意識に対するアプローチの違いはありますが、催眠療法が心理療法の一つであるという見解を理解できるようになったのではないでしょうか。
(関連記事:精神分析学のジークムント・フロイト。精神分析・夢判断と催眠療法)
コメントを残す