こんにちは。
神戸ヒプノセラピー、催眠療法のベレッツアです。
生涯発達理論という人の一生がどのように進んでいくのかということを研究した心理学者がいます。
ポール・バルテスもそのうちの一人で、補償を伴う選択的最適化というものを発表しました。
この補償を伴う選択的最適化はSOC理論ともいわれ、上手に年齢を重ねるサクセスフルエイジングのために必要なもの。
そんな、ポール・バルテスが見つけ出した補償を伴う選択的最適化をサクセスフルエイジングの例と合わせて見ていきましょう。
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ポール・バルテス
ドイツ出身のアメリカの心理学者、ポール・バルテスは、人間が一生をどのように過ごしていき、人として成長していくのかという生涯発達理論を打ち立てました。
ドイツのザールブリュッケン大学で博士号を取得した後、ベルリンのマックスブランク人間開発研究所心理学センター、ベルリン自由大学の心理学教授、バージニア大学の心理学特別教授という経歴を辿っています。
ポール・バルテスの研究・理論は、家族という存在を加味しながら、幼年期から老年までの行動と、その認知機能に関するもので、人は一生かけてある軌跡を描きながら成長していくものという理論。
人の成長を心理学では、発達と言いますが、その発達に関する研究は昔からありました。
ですが、その古い発達に関する心理学は、発達するのは青年までとし、それ以降の中年や老年に関する研究はあまり行湧割れませんでした。
その後近代に入り、ユング以降この流れが変わり、ポール・バルテスらが死ぬまでの期間を研究対象とした人の一生のうちの発達を見た生涯発達理論を打ち立てたのです。
この生涯発達理論がライフサイクル理論。
そんな理論のうちで、ポール・バルテスは、補償を伴う選択的最適化というSOC理論を作り上げたのです。
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ポール・バルテスの補償を伴う選択的最適化
ポールバルテスの補償を伴う選択的最適化とは、専門的に言うと、選択によって特殊化した適応の形態が生涯発達の一般的特徴として持続的に発展すること。
そして、年齢による変化の中で喪失としてのエイジングの側面への適応が重要であり、エイジングにともなう制約に対して、補償的・代替的なメカニズムが発達することです。
ちょっと学術過ぎてわかりづらいですよね。
もう少し、これを分かりやすくしてみましょう。
人は、いろんな選択をしながら、人生を送ります。
そうして、多くの成功と失敗から数多くのことを学び成長していく。
その時、中年から老年に差しかかると、学習によって得るものだけでなく、老化のために失うものもある。
この老化がエイジングであり、その失うなか、代わりになるものが発達してくるということです。
ポール・バルテスは、補償を伴う選択的最適化の中で、人の一生における発達を選択、最適化、補償という3つのものの集合体であると表現しています。
そして、人の一生に影響を与える重要な要素があるともいっているのです。
その重要な要素とは、
- 一生涯を通じて発達する。
- 多方向性及び多次元性
- 成長と衰退としての発達
- 役割可塑性
- 開発における社会文化的条件の影響
- 年齢階級、歴史階級の相互作用
これらを通じて、一生を作り上げていくという生涯発達理論がポール・バルテスのライフサイクル理論。
ライフサイクル理論では、老齢期をいままでの人間関係を死別で失うことや、認知機能の低下で能力を失っていくだけの時期とみなしません。
人生のその時期その時期で成し遂げる課題があるとするのが生涯発達理論であり、老齢期特有の課題を達成し、自分の人生は良い人生であったと思えるものにすることがサクセスフル・エイジングなのです。
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サクセスフル・エイジングとは
サクセスフル・エイジングとは適切な和訳はなく、いまだ社会学、医学、心理学の世界でそれぞれの解釈がなされている状態。
日本語では、決まった定義がないから、少々違っていても問題なく、あなたの好きなように、サクセスフル・エイジングを自由にとらえてみてください。
老齢期に入った人は、落ち着いて、とても丸くなって好々爺となる人もいれば、怒りっぽく嫌味な人もいます。
ですが、穏やかな感情を持っている方が幸せに見えるし、実際に怒りっぽい人より健康的になると言われます。
このような落ち着いた幸せな時間を持つことができる人生にすることがサクセスフル・エイジングの目指すところ。
この幸せな老後にするために、ポール・バルテスは補償を伴う選択的最適化という理論を生み出しました。
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補償を伴う選択的最適化の例
補償を伴う選択的最適化とは、人生においてサクセスフル・エイジングを実現するためのもの。
Selective Optimization with Compenstionの和訳で、SOC理論とも呼ばれます。
人生の最後まで、周囲の人に世話をかけずに自立して生きていくことは、多くの人が望むこと。
ポール・バルテスは、ルービンシュタインというポーランドのピアニストの例をあげて補償を伴う選択的最適化を説明しました。
ルービンシュタインは、89歳まで現役のピアニストをしていました。
95歳まで生きていたので、人生のほぼ大半を現役ピアニストとして過ごしたのです。
現代だからこそ、医療の恩恵をうけて、長寿だったと言えますが、現役をつづけることはなかなかできるものではありません。
このように生涯現役でサクセスフル・エイジングを実現するためにはどうすればよいのか、という疑問に対する答えが補償を伴う選択的最適化なのです。
補償を伴う選択的最適化とは、「補償」と「選択」と「最適化」から成り立ちそれぞれの意味は次の通り。
補償とは、身体的な機能が低下していく高齢者に対して家族などが適切に手助けできる環境であること。
選択とは、高齢者自身が自分の意志で残りの人生をどう生きていくのかを決めること。
そして、最適化とは、その状況を専門家などを使って最大の結果を導き出すことです。
サクセスフル・エイジングに答えはありません。
若い時に成功した人ほど、老後にも同じように評価されたいという想いが強くなります。
でも、幸せは他人からの評価だけではなく、自分自身が幸せだと思ったらそれで幸せなのです。
今までできていた普通のことができなくなるのは、老後になると当たり前。
だから、今、残された能力を最大限に活用して、できることで幸せを感じること。
それがサクセスフル・エイジング。
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ブレーメンの音楽隊は補償を伴う選択的最適化の例
グリム童話のブレーメンの音楽隊は補償を伴う選択的最適化の良い例です。
年を取ったロバ、犬、猫とスープにされそうなニワトリが今現在の苦境を脱するために音楽隊を結成してブレーメンに行こうとする童話です。
結局ブレーメンに向かう途中の家で演奏しながら楽しく暮らすことになるのですが、結果よければそれでよし。
苦境を脱することが目的なのだから、ブレーメンにたどり着かなくても幸せになれたらそれでいいのです。
安全で快適な家に住むという選択が、ロバたちの最適な答えになっていて、そこで音楽を演奏しながら楽しく暮らしていくことで幸せな人生を送っている。
これが補償を伴う選択的最適化なのです。
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まとめ
以上、「ポール・バルテスの補償を伴う選択的最適化でサクセスフルエイジング」をお伝えしました。
補償を伴う選択的最適化とは、サクセスフル・エイジングにとってだけでなく、人生における選択の結果にとって重要な考え方。
立派な一流の会社に就職することや、素敵な人と結婚することなどは、幸せな人生をつかむための選択肢でしかありません。
あなたの人生にとって最適な答えを選び取ることこそが、幸せな生活をおくる秘訣。
いくらお金を持っていても、どれだけ多くの人から賞賛されようとも、自分が幸せでなければ、最適化された答えではないということです。
あなたの人生、ポール・バルテスの言う補償を伴う選択的最適化でこの世で一つの素晴らしいものに変えていきませんか?
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