こんにちは。
神戸ヒプノセラピー、催眠療法のベレッツアです。
あなたは、ダブルバインドという二重に挟み込む心理学の理論を聞いたことはありますか?
ダブルバインドとは、フィールドワークで多くの理論を見つけ出したグレゴリー・ベイトソンという人類学者が作り出した考え方。
パワハラなどに結びつくものとして多くは、ネガティブなイメージでとらえられがちな、ダブルバインドですが、実は、ポジティブなダブルバインドというものもあるのです。
そんな肯定的なポジティブダブルバインドの有効性はどのようなものか見ていくことにしましょう。
ダブルバインドという心理学の理論とは
ダブルバインドとは、二重拘束といわれるもの。
二重(ダブル)の質問であなたの意識を挟み込む(バインド)という心理学の理論です。
このダブルバインドとは、グレゴリー・ベイトソンというアメリカの研究者が作り上げた言葉。
二つの質問をすることで、どちらかの答えに誘導するというものがダブルバインドと言い、2つの質問であなたを挟み込む手法です。
例えば、仕事を終え家に帰り着いた時に、親から、「先にごはんにする?それとも風呂に先に入る?」と聞かれたとしましょう。
こんな時、あなたは何と答えますか?
「風呂」か「ごはん」かどちらかを選ぶことが多いのではないしょうか。
もちろん、この答えが、「寝る」でも、「遊びに行ってくる」でも構わないのですが、ほとんどの人は、2つ質問されたら、そのどちらかを選ぶのです。
このように、どちらかを選んでしまう心理状態が、グレゴリー・ベイトソンという学者が作り上げたダブルバインドという心理学の理論。
このダブルバインドの大きなポイントは、本当に言いたいことである前提を隠しておくこと。
例えば、好きな男性をデートに誘う時を考えてみましょう。
直接、「デートしてください」というのもなんだか気恥ずかしいもの。
こんな時は、「おいしいフレンチの店とイタリアンの店を見つけたんだけど、今週末、一緒にいかない?」と聞くと、ハードルがぐんと下がり、相手の男性は、フレンチかイタリアンで答えを出すでしょう。
このように、「デートに行こう」という本音を隠しながら作った二重の質問がダブルバインドです。
本音を隠すポイントは、
- What(何を)
- When(いつ)
- Where(どこで)
- Who(誰が)
- Why(なぜ)
のうち、ドンピシャの本音から少しずらして、2つ選ぶという選択肢を作るのです。
また、このダブルバインドが成立するためのポイントは次のようなものがあります。
- 2人以上の場であること
- 1つ目の質問とそれを打ち消す二つ目の質問
- 質問された人がどちらの質問に答えても非難されそうな精神的混乱
- 質問された人がその質問された状態から逃げないように囲い込む
- 質問された人が二重に拘束されたダブルバインドにハマっていることを自覚する
- 質問された人がダブルバインドを経験し、ストレス状態にある
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ダブルバインドの例
このようなダブルバインドですが、わかりやすくするために、もう少し例をあげてみましょう。
子どもに勉強させたい時に、「夏休みの宿題、三須から始める?それとも日記から書く?」と聞くと、宿題をするかしないかの2者択一を誤魔化し、どちらを選んでも宿題をするという結果に落ち着きます。
他にも例をあげてみると、あなたが自社製品をセールスしていることを考えてみましょう。
例えば、こんな状況を想像してみてください。
「このA製品は、高性能ですが、価格が高いところが難点です。でも、こちらのB製品は少し性能がA製品より劣るものの、価格がお手頃なのでお買い得です。どちらの商品に興味がありますか?」との質問をお客さんに投げかけてみる。
するとお客さんの答えが、A製品とB製品のどちらをとっても、あなたが売る商品を詳しく説明する機会を得る結果に行きつきますよね。
他にも、デートに誘いたい時に、「次の土曜日と日曜日、どちらが時間空いてる?」とか、「今度の日曜日、遊園地か動物園、行かない?」とかきいてみましょう。
答えが遊園地でも、動物園でも、どちらでもあなたのデートの誘いを相手はOKすることになりますよね。
二つの質問によるダブルバインド
また、前述した「ごはんにしますか?お風呂にしますか?」という問いも、もちろんダブルバインド。
この質問の本音には、さっさと寝る前の支度を済ませて寝なさいという意味が含まれているでしょう。
また、職場で、「この仕事、木曜までにできる?それとも、金曜んまでなら、大丈夫かな?」といったような風景に出会ったことはありませんか?
これも仕事をするということが基本的な前提となっていますが、それを隠し、When(いつ)という質問にすり替えています。
メタ・メッセージによるダブルバインドの例
また、質問の中の質問で、相手を二重に挟み込むダブルバインドもあります。
例えば、居酒屋などでの「ラスト・オーダーです。何かご注文はございますか?」という言葉。
この言葉の言外の意味は、「もう、終わりだから、そろそろお勘定をして帰ってよ」ということですよね。
新しい新規客をその席に座らせたいので、でていってくれと直接言いにくい時の言葉として、よく使われているのではないでしょうか。
そろそろ、お会計をして欲しい、帰ってほしいという言葉は全く表に出ていません。
ですが、注文してもしなくても、これで終わり、店を出る準備が必要であることは同じである、というダブルバインドになっている質問なのです。
こんな面白いダブルバインドという言葉を生み出したグレゴリー・ベイトソンという人を見てみましょう。
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グレゴリー・ベイトソンの情報
グレゴリー・ベイトソンとは、アメリカのフィールドワークによる研究をした人で遺伝学者の父と文化人類学者の母を持ち、文化人類学や精神医学などを研究していました。
第二次世界大戦前に大学院で人類学の修士号を取得し、フィールドワークを中心に心理学を研究しています。
OSSというアメリカ合衆国戦略サービス局にも所属していたことがあり、セイロンやインド、ビルマや中華民国に赴任しています。
そこでは、日本軍の統率をごちゃごちゃにかき混ぜるために心理作戦要因として活躍しました。
このように、実際に人々に触れあいながら現場の知識から理論を汲み取るフィールドワークによってダブルバインド理論を作り上げます。
グレゴリー・ベイトソンはダブルバインドという言葉の以外にも、色々と造語を作っています。
- 自然界の様相を神秘主義的で論理的な「マインドのエコロジー」
- メッセージの中にメッセージが込められているという「メタ・メッセージ」
- 生命科学の最先端と意識や美、聖という領域を結ぶ認識論の「聖なるもののエピステモロジー」
などという言葉。
グレゴリー・ベイトソンは後世に大きな影響を与え続けている本も書いています。
- ニューギニアで生活するイアトムル族の男性が女装し、女性が男装する儀式を描いた「ナヴェン」
- バリ島で行ったフィールドワークを通じて写真で分析していくマーガレット・ミードとの共著、「バリ人の性格」
- もともとコミュニケーションー精神医学の社会的マトリックスという題名だった、「精神のコミュニケーション」
- フィールドワークで得た生前のベイトソンの集大成「精神の生態学」
- 生物学から物理学、精神医学や文学など、幅広い知見で精神を読み解く「精神と自然ー生きた世界の認識論」
- 死後、発刊された生きるものすべてを結び合わせるパターンを描いた「天使のおそれー聖なるもののエピステモロジ―」
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ポジティブダブルバインドの有効性
ダブルバインドはとてもストレスを受けやすく、ストレス値が高くなるということがあります。
ですが、どちらの答えでも肯定的な答えになるものがあります。
それがポジティブダブルバインドという心理学の理論。
そんなポジティブダブルバインドはこのようなものです。
普通のダブルバインドは高ストレス環境
普通のダブルバインドは、あなたから提示された二つの選択肢から選ぶというもの。
だから、ダブルバインドは、答えてくれる人が選びたいと思っているものが別にあったとしても、その二つから選ばなければいけません。
つまり、質問された側の人は、自分の意見を曲げてでも、「答え」を言うのですから、質問から受けるストレスはとても高い状態になります。
これがパワハラに聞こえたり、うつになる原因になったりすることがあるとてもストレスの高いダブルバインド。
この高いストレスを相手に与えるダブルバインドはネガティブダブルバインドです。
ネガティブがあるということは、実は、気持ちが軽くなる、ポジティブダブルバインドというものもあるのでそちらを見てみましょう。
ポジティブダブルバインドの有効性
ポジティブダブルバインドとは、二つの質問が用意されているところまでは同じですが、答えはどちらも肯定的な答えになるというもの。
また、ポジティブなダブルバインドとは、自分にとっての利益につながることばかりではありません。
質問する相手にとっての利益につながるものもあります。
その一例として、「あなたの中には、大きな能力が眠っているのを知っていますか?」という問いの答えを考えてみてください。
知っていると答えても、また、知らないと答えてもあなたの中に大きな能力が眠っているということを自然と認めたということになります。
このように、ポジティブな答えが返ってくるダブルバインドがポジティブダブルバインド。
ポジティブダブルバインドを使うことは、言葉で物事を肯定的にとらえる良い訓練ともなるでしょう。
(関連記事:ゲシュタルト心理学の考え方をわかりやすく説明するとこうなります。)
催眠療法のダブルバインド
催眠療法でも、ダブルバインドという手法があります。
許容的な催眠誘導で有名なミルトン・エリクソンがよく使う方法がダブルバインドでした。
他のダブルバインドと同じように、どちらを選んでも答えはあなたの思い通りになるという手法で、許容的催眠誘導と呼ばれるもの。
この他にも、催眠療法、NLPにダブルバインドというテクニックがあります。
その方法とは、まず、あなたの両側の耳へ別々の語りかけを行う方法。
そして、すると、あなたの意識は混乱を引き起こし、潜在意識は活性化されていき、記憶の焼き付けへと導かれるのです。
あらかじめ覚えておきたい単語をランダムに並べます。
そして、相談者を囲むようにして、その単語を読み上げていきます。
そのとき、二人で同じリストを読み上げるのですが、一人はリストの上から、もう一人はリストの下から読み上げていくのです。
すると、聴いている相談者の意識が混乱し、潜在意識に直接語りかける効果が出て記憶に焼き付けられるようになるということ。
これが、催眠療法やNLPで使われているダブルバインド。
イヤホンで聞く催眠音声というものもこの理論を活用しているものがあり、右のイヤホンと左のイヤホンと別々の音声を流すものがあります。
(関連記事:運動会で気付いた催眠現象 ~あなたの記憶が書き換えられる瞬間~)
まとめ
以上、「ダブルバインドとは心理学の理論。ポジティブダブルバインドの有効性」についてお伝えしました。
ダブルバインドとは、質問に対する答えが二つの選択肢であり、その答えから選んでしまうという心理がグレゴリー・ベイトソンが作った理論。
催眠療法、NLPでは、意識の混乱を利用して、潜在意識を引き出し、記憶していく方法がダブルバインド。
臨床心理の世界では、他者を受け入れながらカウンセリングする機会がないから、ダブルバインドを行う時は、録音機能を使って行うことが多くあります。
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