エリクソンのライフサイクル理論でのアイデンティティは心理学の基礎知識

こんにちは。

神戸ヒプノセラピー、催眠療法のベレッツアです。

 

エリクソンE.H.という心理学者が提唱した、ライフサイクル理論。

このライフサイクル論で出てくるアイデンティティとは、青年期に起こる発達課題とされています。

 

それでは、心理学の基礎知識ともいえるアイデンティティとはどんなものなのか見ていくことにしましょう。

なお、エリクソン,E.H(Erik Homburger Erikson、エリク・ホーンブルガー・エリクソン)は、エリクソン催眠のミルトン・エリクソンとは別人です。

 

エリクソン,E.Hとは

エリック・ホーンブルガー・エリクソン Erik Homburger Erikson 提供:Wikipedia

エリック・ホーンブルガー・エリクソンとは、アメリカで精神分析を行っている発達心理学者

ドイツで生まれ、画家を目指してヨーロッパを放浪し、その後アメリカにおいて心理学の分野で活躍しました。

 

精神分析のジークムント・フロイトの娘アンナ・フロイトの弟子であり、エリクソンはフロイトの人格発達理論の影響を大きく受けています。

エリクソンの心理学は、発達心理学というだけあって、人間の発達、つまり、人の一生涯の生まれてから死ぬまでの推移についての研究。

 

その結果生まれてきたのが、エリクソンのライフサイクル理論です。

そんな人生の縮図ともいえるエリクソンのライフサイクル理論を見ていきましょう。

 

エリクソンのライフサイクル理論

ライフサイクルに関する理論は、エリクソン以外にも、ユング、レビンソン、スーパーらが提唱したものがあります。

それぞれ、

  • エリクソン:発達を8段階に分ける。のちに9段階となる。
  • ユング:人生を一日の流れになぞらえる。青年前期から中年への転換期「人生の正午」が有名
  • レビンソン:人生を四季になぞらえる。
  • スーパー:職業的発達段階論で発達はPDCAのようにらせん状に行われるとした。

このように見てみると、発達心理学において、どのライフサイクル理論でも、人生には一種の流れがあるとしているところは共通。

 

そんな、ライフサイクル理論で、一番細かく分かれているのがエリクソンのライフサイクル理論なのです。

このエリクソンのライフサイクル理論では、基本的に8段階で構成されており、次のような段階を踏んで発達します。

 

エリクソンのライフサイクル理論

  1. 乳児期(0~2):基本的信頼対基本的不信:希望 
  2. 幼児初期(2~4):自律対恥・疑惑:意志
  3. 遊戯期(4~6):自主性対罪の意識:目的意識
  4. 学齢期(6~12):勤勉対劣等感:自己効力感
  5. 青年期(12~22):アイデンティティ対アイデンティティ拡散:忠誠
  6. 成人初期(22~40):親密対孤立:愛
  7. 成人期(40~64):世代性対停滞:ケア
  8. 老年期(65~):自己統合対絶望:英知
    ※( )内は年齢

 

この発達段階で出てくる対立する問題を解決できた時、最後に記されたものが手に入り次の段階にスムーズに進んで育子ができます。

この問題を片付けずに次の段階に進むのは難しく、対立する右側の問題にとらわれてしまって、いつまでも前の発達段階にとどまってしまうことになります。

 

エリクソンのアイデンティティとは、このライフサイクル理論の青年期に現れる乗る超えるべき課題

そんなアイデンティティは心理学でもよく使われる言葉なので、少し詳しく見ていくことにしましょう。

 

エリクソンのアイデンティティは心理学の基礎知識

エリクソンのライフサイクル理論で青年期の問題として出てくるアイデンティティとは、日本語に訳すと、自我同一性。

この自我同一性はのちに、自己同一性ともいわれ、その後、単に、同一性という言葉も使われるようになりました。

 

このアイデンティティという自我同一性とは、あなたの人格を作り上げていく基本となる考え方

だから、このアイデンティティとは、「私とはこんな人間である」という認識であり、発達心理学以外の多くの心理学の分野で利用されている言葉です。

 

アイデンティティの意味をお伝えする前に、そのアイデンティティを確立する時期である青年期について少しふれておきましょう。

 

エリクソンのライフサイクル論における青年期の特徴

青年期の始まりにおけるこころと身体の変化

青年期とは、12~22歳という子供と大人の間の時期。

単に年齢で区分するのではなく、第二次性徴が開始する時期、そして、思春期が始まる時期を「青年期の始まり」ととらえることが一般的。

 

ただし、青年期の終わりについては、わかりづらくなっています

というのも、どのような状態が大人であるのか、という見方によって、大人になるという次の成人初期への移行がわかれるから。

 

最近の発達を見ていると、おおむね12歳くらいから20代、30重手前までを含むようになってきました。

この時期には、「体の急激な成長」「性的な成熟」「男女差の増大」という3つの変化が起きます。

 

身体の急激な変化

身体の成長は、生まれてすぐから2歳くらいまでで2倍弱の伸長になるという急激な成長の次に大きな成長が青年期に出現。

これを思春期スパートといい、男子で12歳くらい、女子で10歳くらいに身長の伸びるピークがやってきます。

 

近年、思春期の成長変化が以前よりも低年齢化している気がしませんか?

実は、この現象を発達加速現象といい、栄養状態の改善、異人種間での交配、居住の環境要因、日照など気候要因、都市化による性的刺激の増大などが複雑に影響しています。

 

性的な成熟と男女差の拡大

青年期になると、生殖機能が機能し始める、第二次性徴が発現。

その結果、男女の違いがハッキリとし、男女差の増大を生むことになっていきます。

 

男性は声変わりや筋肉量の増加、ヒゲなどの変化。

女性は、乳腺が発達し、皮下脂肪が増え、初潮が始まる。

 

簡単に言うと、男性も女性もそれぞれの生殖機能が発現し、男性は男性らしく、女性は女性らしくなっていくのです。

このような変化は青年期に共通して起こる現象ですが、その時期やすすみ方は、個人差が大きい。

 

また、この第二次性徴は周りの人からも見ただけで良くわかる大きな変化

そのため、この変化をどう感じて、どうとらえていくかが青年期の心理状態や健康状態を左右するのです。

 

例えば、生の成熟を受け入れられないと、身体に対する不満が募っていきます。

このような身体に対する不満は、女子の方が否定的であり、無理なダイエットなどによる健康障害や摂食障害などの心理的問題へと進む可能性が大きいことは否定できません。

 

このような身体の変化を受け止める青年期という段階で、戸惑いや恥かしさ、嫌悪などを感じやすくなり心理的に不安定になりがち。

この青年期という時期をどう過ごすのかは、本人だけでなく、周りの人々にとっても問題なのです。

(関連記事:ジェンダーって何?その意味と定義とは!性の意識と現代のジェンダーの問題

 

青年期に必要な心理的離乳

青年期では、身体的な変化と心理的な変化だけではなく、人間関係においても変化が起こります。

その一つが親からの精神的な自立

 

青年期になると、親の見えるところから離れ、他の人とは違う「自分」を模索しながら確立していきます。

思春期・青年期に見られるこのような自立・自律を目指す行動は、心理的離乳や脱衛星化、第2の分離ー個体化と呼ばれるもの。

 

一般的にはこれらは「親離れ」という言葉で表されるでしょう。

これらのことばは、どれも青年期にある人間が周囲の大人から心理的に離れて自立し、自律する過程。

 

しかしながら、この親離れは、スムーズにいかないことが多く、葛藤や反抗を生むことも少なくないのですが、とても大切なもの。

この青年期に起こる葛藤や反抗は大人になるための必要なプロセスであり、自我の成長のあかしなのです。

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青年期に起こる第二反抗期

青年期に起こる周囲に対しての批判的で反抗的なこの時期が、第二反抗期。

幼児期に起きる反抗期と対比させて、第二反抗期となりました。

 

幼児期に起こる第一反抗期は、他の人とは違う「わたし」という感覚が生まれることにより起こります。

これに対して、「わたし」を確立する過程において始まるのが、第二反抗期。

 

今まで素直に従ってきた親の価値観や家のルールが絶対ではないことや、親を含む大人も完全な人間ではなくいろいろな矛盾を持っていることに気づき始めるのが青年期。

だから、青年の心が大きく揺さぶられ、反抗するようになるのです。

 

この青年期の反抗の対象は、身近にいる親であることが多く、口答えをしたり、激しいケンカを繰り返したり、親を無視して口をきかなくなったりします

感情が高ぶりすぎると、暴力に訴えることもあり、親にとっては子供の豹変に戸惑い、心情が理解できないということもあるでしょう。

 

このように青年が反抗する心理的な意味を考えてみると、その心が見えてきます。

この青年期の第二次反抗期はその対象を親など身近な大人に向けますが、全くの他人に向かってはほとんど反抗しません。

 

身近な親が対象になるのは、親への依存や甘えがその基盤にあるから。

自律や自立と依存は、対照的な両極の存在と考えられがちですが、反抗や葛藤は人が他の人に依存しながら自立し、自律するために存在するものなのです。

 

青年期における反抗や葛藤は、親子関係や家族関係の進展と変化という意味でも大きな意味があります。

それは、第二反抗期を過ぎて親から心理的に分離できた子供がそれまでの違った視点で親を見ることができるようになるから。

 

家族以外への人間関係の拡大や、一人ぐらしや就職などの新しい生活も手伝って、親を完全ではない一個の人間として見ることができるようになるのです。

このようにして、青年期後期以降、作られる親子関係は新たな相互性を持った親子関係。

 

この時期の反抗や葛藤を踏まえた親離れは親と離れて縁を切ることではなく、新たな親子関係に気づくこと

親との新しい関係をつくるための手さぐりによる一通過点にしかすぎません。

 

ただし、近年は、このような反抗と葛藤を併せ持った親離れが少なくなってきているようです。

ある調査では、第二反抗期を体験せず、親と仲よくうまくいっているとの回答が9割以上を占めていました。

 

内閣府の小中学生に対するアンケートでも、家族と話す機会が増え、親に対する信頼感が増している結果となっています。

この結果をもとに考察すると、青年期の親との反抗や葛藤は、家族システムの適合性という視点が必要。

 

この第二反抗期は単なる青年の心理的な問題というだけではなく、親と子供の相互作用の結果なのです。

親側の姿勢と子供に対する対応の変化、そしてその時の社会的な状況の変化についていく必要があるでしょう。

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青年期に起こる重要な他者の変化

重要な他者とは、心理学者サリバンのことば

人間にとって、こころのよりどころとなる他人や何か重要なことを決める時に依存しようとする他人のこと。

 

この重要な他者になることができるのは、成長の段階に応じて変わっていきます。

小さい時は親がその対象ですが、青年期に入ってくると、親との関係性の見直しにおいて友人が重要な役割を果たします。

 

青年期の真ん中にいる人が社会に出るにあたって友人関係はとても重要

この関係とは、

  • 友人関係を投資て社会的スキルを学ぶこと。
  • 緊張や不安、孤独などの否定的な感情を緩和すること。
  • 自分の行動や自分を知るためのモデルとなること。

という役割を果たすことになる友人関係です。

 

最近の青年は友人関係が希薄化していると言われますが、よく一緒に遊ぶ友人の数や悩みごとを相談できる友人の数は近年増えてきています。

SNSなどのソーシャルメディアも影響し、いろいろな場面において、友人関係も使い分けるようになってきているという見方もできるでしょう。

 

しかしながら、国際的に見ると、日本の青年の友人関係に対する安心感や満足感は相対的に低いという結果が出ています。

対立することを避ける、「優しい関係」や、相手の反応を見ながらうごき方を考える気配りが必要になっているのでしょう。

 

友達の間で仲間外れにされないよう、話題を合わせたり、与えられたキャラクターを演じたりすることも少なくありません。

現代の日本の青年は、友達の数が多い一方で友達の輪の中では細かく気を使いながら関係を維持しているのでしょう。

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エリクソンのライフサイクル理論の青年期におけるアイデンティティの模索

それでは、青年期について説明してきたことを踏まえて、エリクソンのライフサイクル理論をみていきます。

心理学では、発達課題ということばがあり、それは、人生を進んでいくにあたって迎える時期に応じた解決すべき問題があるという考え方。

 

こんな発達理論の一つとして、エリクソン,E.Hは8つの段階に分けた心理社会的発達理論というものを創り出しました。

各年齢段階にその時期特有の危機があり、それをその都度その危機を乗り越えていくことです。

 

そうしてあなた自身が生涯にわたって徐々に成長していくという理論。

エリクソンがいう危機とは、生物学的に生まれる問題だけでなく、社会とのかかわりの中で生まれてくると考えられていて、心理社会的危機と呼ばれます。

 

エリクソンは、このようにその時期に対応する危機を乗り越えていくことが成長の証だと明言。

この危機を乗り越えられた場合と失敗しての危機に飲み込まれた場合とを対立させて図で表しています。

 

それでは、この青年期にあらわれる特有の危機とは何なのか。

エリクソンはそれを、「アイデンティティ対アイデンティティ拡散」と言っています。

 

このアイデンティティとは、日本語で言うと、自我同一性、または、自己同一性、同一性という言葉と同じ。

このアイデンティティを手に入れるということは、自分の進むべき道が見つかるということ。

 

反対にアイデンティティが拡散してしまうと、色々と自分の方向性が散らばり、自分が何をしたいのかわからない、とか、途方に暮れるなどといった精神状態に陥ってしまうのです。

エリクソンがいう、アイデンティティという課題を解決することとは、次の通り。

 

エリック・ホーンバーグ・エリクソンのアイデンティティ達成に必要なこと

  1. 自分の多面性を知りながらも、自分はこの世にたった一人しかいない存在であることに気づく
  2. 現在の社会の集団に所属して、自分も他人も、ともに受け入れることができている
  3. 現在・過去・未来という時間軸の中で連続して存在している自分の存在・その中での一貫性のある感覚を持っている

 

「本当の自分とは何か」「自分らしく生きるとはどういうことか」という問いへの答えを探すのが青年期

この答え、その感覚を得るために、青年期に入ると、いろいろと考え始めることになるのです。

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エリクソンの提唱する、モラトリアム

さらに、エリクソンは、「モラトリアム」という考え方を提唱します。

このモラトリアムとは、経済用語であり、借りたお金などの負債を支払いを一定期間、猶予すること。

 

エリクソンは、この「モラトリアム」という経済用語を使って、青年期を社会的な責任や義務から免除されたアイデンティティを確立するための猶予期間として定義しました。

そして、うまくアイデンティティが確立できなければ、何のために生きているのだろうかと途方に暮れてしまうという愛で電ティティ拡散につながるのです。

 

ここで、青年期におけるアイデンティティの達成に至る過程を見てみましょう。

ジェームス・マーシャというアメリカやカナダで活躍した心理学者がアイデンティティ地位という自我同一性地位に関する研究を行っています。

 

どういう研究かというと、その時期に実際に危機に直面したかどうかということと、重要な領域に積極的に関与したかどうかという観点を組み合わせてみるというもの。

この二つの組み合わせで、「アイデンティティ達成」「モラトリアム」「早期完了」「アイデンティティ拡散」という4つの地位を設定して明らかにしようとしたのです。

 

この研究の結果、アイデンティティを達成するための経路は個別性や多様性があることがわかりました。

また、大学卒業時点で達成できている人は4割程度であり、アイデンティティの確立は青年期だけの問題ではないということもわかったのです。

(関連記事:ヒプノセラピー ~催眠療法のススメ~ あなたの脳と心に働きかける最強の心理カウンセリングとは

 

アイデンティティ研究のその後

エリクソンは青年期の課題として、アイデンティティの確立をあげています。

ですが、この課題を青年期に一度確立すれば、それで終わるのかという問題も出てきました。

 

エリクソンの研究をしている心理学者の中では、アイデンティティは一度確立されればそれで終わるわけではなく、その後の人生を通して何回か危機に直面し、そのたびごとに問い直されなければならないものではないかともいわれています。

「自分とは何か」という問いに対する答えは、獲得しては揺らぐというプロセスを何度も経験しながら、生涯を通して考え続けるべきものなのかもしれません。

 

いちど、あなたやあなたの家族の人生のことを振り返ってみてください。

青年期以降、希望した就職への失敗、会社の倒産やリストラ、病気や離婚、子供の問題など、事前に予測のつかないことばかりです。

 

自分自身を揺さぶられるような人生の危機は、いつ訪れてくるかわかりません。

青年期の時点で「私とはこういうものだ」とか「私にはこれしかない」とかいうような融通の利かないアイデンティティを確立してしまうと、これから先に起こるかもしれない危機的場面への対応を難しくするのではないでしょうか。

 

エリクソンは、社会と個人の相互的な関連性をもとにして理論を作り上げました。

だから、作っては修正するという過程を繰り返していき、その都度危機を乗り越えて、あなたのアイデンティティをあなた自身が修正を行うのはいかがでしょうか。

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まとめ

以上、「エリクソンのライフサイクル論でのアイデンティティは心理学の基礎知識」をお伝えしてきました。

ライフサイクル論をエリクソンが提唱してから、多くの人々がその理論を研究し、実践しています。

 

ここで注意しておきたいことは、人生とは、人それぞれであり、目の前で起こる事態も、バラバラで全く異なります。

また、エリック・ホーンブルガー・エリクソンがライフサイクル理論やアイデンティティの理論を作り上げたのは、第二次世界大戦後の1950年という昔のこと。

 

だから、打ち立てたアイデンティティにしがみつくのではなく、あなたの周りの状況に合わせたアイデンティティを確立するのが良いという考え方もできるのです。

変化の目まぐるしい現代社会におけるアイデンティティの確立は、青年期だけのものではなく、刻々と変化する状況に合わせていくことが大切であり、適応的なのかもしれません。

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